今日はハロウィーン。
僕が一年で一番嫌いな日。
去年は蛙に変えられ、ダンブルドアとキスしなければ元に戻れない呪いを不覚にもポッター達に掛けられてしまった。
この最悪な出来事を思い出す度に奴らの額に五寸釘を打ち付けたい衝動に駆られる。
この様にハロウィーンの奴らの悪戯はいつも以上に悪質だ。
今日は何としても奴らの悪戯を防いでやる!僕はそう心に決め自室のドアを開けた。


「なんだこれは…」


だがそこにはいつもの談話室はなかった。
あるのはスポンジが飛び散ったソファーに蛍光色の液体がへばり付いた壁。
そして床には緑色に膨れ上がった奴や口からカラフルな泡を飛ばす奴など様々な症状のスリザリン生が倒れていた。
これが本当にスリザリンの談話室なのか?


「セブルス!」


僕が悪夢の様な光景にに顔を歪ませているとこの光景とは不似合いな可愛らしい声に名前を呼ばれた。
横を向くとそこにはナマエが立っていた。
ナマエとは僕が密かに思いを寄せてる愛らしい天使ような女の子だ。


「大丈夫かナマエ!」

「大丈夫私は無事よ。だってこれ私がやったんだもん」

「なっ!?」

「正確に言うと私のせいでこうなっちゃった。なんだけどね」

「それはどう言う事だ?」


話を聞くとハロウィーンで調子にのった男達が「Trick or Treat!」とか言いながらお菓子も持たないナマエに詰め寄ったそうだ。
ふん、下心がみえみえのゲスな奴等め。
しかもこの中にはどうやって入ったかグリフィンドール生が4人紛れ込んでいたらしい。
嗚呼果しなく嫌な予感しかしない。
そして困ったナマエはイタズラを逃れるため勝った方に賞品を出すスリザリンとグリフィンドールの寮対抗イタズラ大会を提案したらこのような事態になってしまったとの事だ。


「ところで賞品とはなんだ?」

「キスよ」

「キ、キスだと!?」

「大丈夫よ、安心してセブルス」

「何が大丈夫なもんか!」


賞品がキスだなんてナマエは何を考えているんだ!僕は絶対反対だ!
説得しようとナマエの肩に触れようとした瞬間目の前を白い光線が通り過ぎた。


「こら!魔法は無しのルールよ!」

「俺のナマエに触ろうとするからだ!スニベルス、お前このあと覚悟しとけよ」

「おっと今頃登場とは随分呑気だね。ベッドの中で震えてたのか」

「んーんーもぐもぐんーんー」

「口の中の物を飲みこめリーマス」

「ゴクン、スリザリンの攻撃が当たってピーターが気絶しちゃった」

「リーマス、そう言う大事な事はチョコを食べないで報告してくれ」


胸糞悪い。やはり紛れ込んだグリフィンドール生とはブラック、ポッター、ルーピン、ペティグリューのバカ4人のことか。
今までソファーの後ろに隠れていたらしい。
こそこそとゴキブリのような奴らだ。


「グリフィンドールはわいわい賑やかね」

「まったく騒がしい馬鹿な連中だ」


だが奴らは普段から悪戯をし慣れてるだけあって手強いのか沢山のスリザリン生が見るも無残な姿で倒れている。
こんな馬鹿共に負けるなんて情けないスリザリン生で残ってる者はいないのか!
辺りを見回すと暖炉のそばで動く人影を発見した。


「ルシウス先輩、部屋に戻って良いですか」

「ダメに決まってるだろレギュラス!ナマエのキスがかかっているのだぞ!」

「興味ありません。それよりルシウス先輩がキスに執着するなんて珍しいですね、先輩にとってはたかがキスでしょ?」

「たかがキスされどキスだぞレギュラス!」

「意味が分かりません」

「ふっふっふ、もうすぐナマエも私にメロメロさ!私はキスだけで相手をイかせる事が出来るのだから!」

「イってるのはルシウス先輩の頭です」


よりによって残っているのがルシウス先輩だなんて最悪だ。
誰が残っててもナマエとキスさせるのは嫌だがルシウス先輩は特に嫌だ。
いや、そもそも賞品がキスと言う事がおかしいのだ!僕は考え直してもらおうとナマエの方に近寄った。
だが先に声を発したのはナマエの方だった。


「みんな集合!イタズラ大会を終了します」

「えっ」

「3対2でグリフィンドールの勝ちだな!」

「いいえ、勝ち残りの結果はグリフィンドールがシリウス、ジェームズ、リーマスの3人。スリザリンがルシウス先輩、レギュラス、セブルスの3人。よってこの勝負引き分けとします!」

「はぁ何で途中から来たスニベルスが入ってるんだよ!ずりぃーよ!」

「シリウスが喋る度にレギュの端正なお顔が歪むので黙ってください。そしてこれは私ルールだから良いのです」


この結果に僕自身も驚いていた。
まさか知らないうちに参加者の一員になっていたなんて、だが引き分けと言う事はナマエは誰ともキスをしなくて良いと言う事だ。
僕はホッと胸を撫で下ろした。


「でも両チームとも頑張っていたので両チームの代表者、そうですねルシウス先輩とシリウスは前に出てきてください。2人には賞品を与えます」

「はっ?」

「やった!マジかナマエ!」

「ふふ、ナマエは私とキスしたいんじゃないかと思っていたのだ」

「どう言う事だ!勝負は引き分けのはずだ!」

「外野は黙ってろ!」

「そうだ見苦しいぞセブルス」

「じゃあ2人共目、瞑って」


やっとホッとしたのに何を言っているのだ!
まさかナマエはこいつ等とキスがしたいのか?僕がそんな事を考えてるうちにナマエの手はすでに2人の頭へと回されていた。


「嫌だ!やめるんだナマエ!」


だが僕の叫びは遅く2人の唇は重なりあい、そして…


「「「おえぇぇぇぇぇ!!!」」」


談話室全体に嗚咽が響いた。
確かに唇は重なりあったがナマエと唇が重なりあった者はいない。
重なりあったのはルシウス先輩とブラックの唇だ。
2人の頭に手を回したナマエはそのまま2人の顔をくっ付けキスをさせてしまったのだ。
そんなルシウス先輩とブラックの顔はお揃いの真っ青な色に染まっていた。


「うふふ、どうだった?賞品のキスは」

「オエッど、どういうことだナマエ」

「しょ、賞品はナマエからのキスではなかったのか」

「あら、賞品がキスとは言ったけど私のとは一言も言ってないわよ」

「「「えっ!」」」

「それに私誰からもお菓子貰ってないもの」

「それってつまり…」

「うふふ、Trick or Treat!悪戯大成功!」


そう言うと天使のようなナマエはニッコリと悪魔のような笑みを浮かべた。



ハロウィーンはキスの味



(まったくナマエには騙された)
(ごめんね、でもどうしてもシリウス達に去年の仕返しがしたかったの)
(えっ)
(それにシリウス、ショック過ぎて脳回路がショートしてるから当分セブルスにちょっかい出してこないわよ!)
(まさか初めから全部僕の為に!?)
(えへへ、どう?楽しかった)
(ああそりゃあもう…)


やっぱりナマエは僕の最高の天使だ。



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