「なまえ様、どうぞ此方へ。」
「うわぁ…」

たくさんの反物、反物。どれも高そう。

「どれでも好きなの選んでくださって構いませんよ。」
「ど、どれでもって…」

言われても。
どれも高そうで高級そうな物ばっかり!
とても良いものを使って作るんだろうなと感心。
いつまでもどうしよう、と唸ってばかりいたら、

「なまえ様なら、こんなのなんか似合うのでは。」

と女中さんに声をかけられた。だけど、それは―…。
蒼い生地に金箔をこぼした様な、金糸で刺繍が施してある、いかにも高そうな着物だった。

「そんな高価なもの、私は着れませんよ!一番安いの!この中で安価なものでいいです!私は客人でもなんでもないんで!」
「なまえ様は大事な客人ですよ。もてなす様、幸村様に申し付けられました。」

もてなすって言われても…。
まだ私の正体は明らかになっていないのに良いのかな。

「なまえ様、これなら如何でしょう?これで宜しいですよね?」
「うっ…」

笑顔が、黒いような、気がする。無言の威圧が…。
"Yes"としか言わさせ無さそうな。むしろ、言わないとやばそう。

「…は、はい。」

この着物はさっきの反物とは違って、薄い緋色の生地。
さっきを大人っぽい、と言うのならばこれは女の子らしい。
ま、私に似合うかどうかは別としてね。

「できましたよ。超度良いくらいの髪でしたので、簪で結ってみました。どうでしょうか?」
「すごーい。え、これ私?私も化けれるのか!』
「なまえ様はお綺麗ですもの。化粧なんてしたらもっと綺麗になりますよ。」
「またまた。お世辞なんて言っても何も出てきませんよ!」
「ささ、幸村様の元へ行きましょう。」

と言って、着替えた部屋を後にする私と女中さん。
あ、女中さんの名前聞いとかなくちゃ!いつまでも女中さん呼びは失礼だよね。
ていうか、ここ広いなー、絶対迷子になりそう。寧ろ、迷子になれって言ってるようなものだよね。

「ここですよ。中で真田様や猿飛様がお待ちになってるはずです。どうぞ。」

ななななんか、こう言うのって緊張するんだよー。
えっと、人、人、人とかいて飲む。…ほんとに効くのかなコレ。
ふー、と息を吐いて深呼吸。よし、いける気がする。

「えーと、失礼します…?」
ゆっくりと襖をあけるとそこには…

「ほらなまえちゃん来たでしょ!いつまでも甘味ばっかり食べないの!」

おかんがいた。

「旦那、口の周りに餡子付けない…はあ。」

おお、おかんだ。
いやー、良いお母さんになれると思うよ。

「なまえちゃん!今なんか失礼な事考えてたでしょ。」

読心術とか…なんかいやらしいよ。あ、ていうか忍だったんだね猿飛さんって。
忍としては優秀かも知れないけど、外見ダメダメだよね。
忍ぶ気あんのか!って言う格好じゃ

「なまえちゃん!そういう事は思わないの!って言うかいやらしいって何!?」

だって事実じゃ

「だってじゃないの!」
「読心術やめてください!周りから見たら一方的な会話です!」

全く、これじゃあ話が進まないよ。
何のためにここに来たんだか…。

「はい、じゃあさっきの続き、聞かせて?」
「はあ…さっき着替える時に考えてたんですが、私はきっとタイムトラベル…したと思うんです」
「タイム、虎…なんでござろうか?」
「時間旅行であってるかな?普段の時間から独立して過去や未来に行くこと…です。」

でも、もしこれが本当ならば。
それでもまだ帰れる見込みがあるのならば。
どんなにいい事か…。

「前にも言った通り、貴方達は私の生まれた時からして400年前の人。
そして貴方達からすると私は400年後の人。つまりは…」
「未来から来た、未来人って訳ね。」
「未来からにござるか。」
「信じてくれ、とは言いません。ですが、これが私の言う"事実"なんです。」

ほんとは信じて貰いたい。
でもこれという証拠が無い。
だからといって、嘘吐いても後味が悪い。なんせ私を助けてくれた人々だから。

「これは信じるしか無いよね、旦那。」
「某ははじめからなまえ殿のことを信じていたでござる!」
「本当…?ありがとう。」

みんな信じてくれたみたい。
でも、中には渋々信じてやった…って感じの人も居るけどね。しょうがないけど。

「…自己紹介がまだでござるな。某は、真田源ニ郎幸村と申す!幸村と呼んでくだされ!」
「分かりました!…改めて、私はなまえと言います。何とでも呼んでくださって結構ですよ。」

ほんとに幸村さんなんだね。
家に帰れたら、自慢しようそうしよう。

「俺様は猿飛佐助ね。佐助って呼んで。」
「知ってる。…宜しくね佐助。」

名前で呼ばれたのが、そんなに嬉しかったのかな。
後ろにお花がたくさん飛んで…あー、気のせい気のせい。

「俺様、なまえちゃんの時代の話、聞きたいな。」
「そっ、某も聞きたいでござる!!」
「え!?」





今夜は眠れない。
(2日目:ばいばい現代。はろー戦国時代!)

100319
100328 加筆/修正
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1話が短いだけあって、2話目が異様に長い。長すぎる。
長々と読んで下さり、ありがとうございます。
ちなみに3話目は短いです、安心してください(笑)

 

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