「…、あれ、ここ天国…な訳ないか。」


ここは一体何処なんだろう。
最後に見た景色は、道路で車が……

「…っ!」

頭がずきずきする。痛い。
ひかれた時に思い切り頭を地面にぶつけたんだろう。

ひかれた、事だから死んじゃった、んだよね?
でもここ天国?思いっきり畳だよね、ここ。しかも丁寧に布団まで敷いてあって。

………

「まさか天国…!?やだー!」

スパァァン、と襖を開ければ此方に向かってきたであろう人物とごっつんこ。

「ごめんなさいここどこですかあなた誰ですか、あー頭が痛い!」
「大丈夫、ってか落ち着こうか。」

はい、としゅんとなる私。もう少し落ち着いた行動が出来ないのか自分。

「ここはどこであなたは誰ですか?」
「俺様は猿飛佐助。ここは甲斐の上田…かな。」

はあ……。は!?

「猿飛佐助って言いました今!?甲斐に上田!?…無い無い。」

あー、これはきっと夢だ。うん夢。目を覚ませ!
と、ほっぺたを思い切りつまんでみる。…い、痛い。
夢じゃないとしたら…まさか。

「もしかして、真田源ニ郎幸村様…とかいたり。」
「旦那のこと…?何で知ってるの。その服といい、旦那のことを知ってるなんて…何者?」

あ、はは。まじでか。
でも、この状況からして私の命が危ないかもね…

「私が今から言う事は聞き流してください。あくまでも独り言です。…信じて貰えるかどうか分からないので。」
「とり合えず全部吐いてよ。」
「私が知るここの地名は甲斐じゃなくて、山梨。
真田様が生きてるとするならば、私が生まれた時代よりも遥か400年以上も前のこと。」
「何いってるのあんた。正気?」
「だから言ったじゃないですか!信じで貰えるかどうかわからないって。でもこれが私の言う真実です。…だから、多分私は…――」

「あー、ちょっと待ってて旦那呼んでくる。そこ動かないでよ。」

はあ…。
っていうか猿飛佐助…真田十勇士って実在してたんだ。
にしてもこんな事びっくりだよね。
あー、でも如何しよう。死んでない…んだよね。
もしかしたら、向こうに帰れるかも

スパァン!と襖の開く音がした。

「ここでござるか!佐助が拾った女子の部屋と、は!?」
「…?」
「は、はっ、破廉恥でござるうううううう!!」
「う、うわあっ!叫ぶなああああ!!」

びびびびっくりした。…はれんちって、はれんちって言う方が破廉恥でしょ。
てかどこが破廉恥よ!健全な女に向かって…

「女子がそのように…、肌を…曝け出す、など…っ」
「肌?え?」

肌?え、別に普通じゃない。足とか、腕とかって言いたいんでしょうけど。
まー、うん。制服じゃあ仕方ないんだけど。

「旦那…だから言ったのにあんたはあっちで女中と着替えてきて。これじゃあ旦那も煩くて敵わないからね。」

やれやれ、とため息をつく佐助さん。
うん、ご苦労様。

「聞いてなかったけど、名前は?」
「なまえです。」
「なまえちゃんね。詳しい話はあっちで聞くから、着替えたら女中ときてね。」

なまえ様、と後ろから声をかけられびっくりしたと思えば女中さんでした。





 

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