「…うわ、雨降ってる。」

今日の天気は朝から雨みたい。
ここには、テレビなんてないからこの後の天気予報なんて解らない。
晴れるのか、雨のままなのか。

「うーんとねー、雨のち晴れ、ってとこかな」
「さ、佐助!いきなり出てこないでよ!心臓に悪いから」

いきなり隣から声が聞こえたと思ったら、佐助だった。
忍だからって…、急に現れていいと思ってんの?
全く、これだから忍…佐助はさー。

「ちょっと!今、忍じゃなくて、俺様のことだけ言ったでしょ!」
「だって、中には忍でもこそこそしない人だっているじゃん。…多分」
「あはー、ちょっとそれ傷ついた。」

傷つけるつもりは無いよ。だって事実だもんね。

「佐助さ、幸村って今日いる?」
「旦那?稽古してると思うけど。」
「そう。じゃあ、厨借りていい?」
「なんか作るの?…作れるの?」
「全く失礼な!料理の一つや二つ作れます!」

これだから佐助は…。
やだやだ。

「なまえちゃん何作るの?団子とかだったら、俺様も手伝うよ?」
「団子じゃないよ。ほら、この前言ってた"ホットケーキ"作るの。
でも、ホットケーキだけじゃ物足りないと思うから、佐助も団子作って」
「御安い御用。旦那の団子作りは慣れてるからね。」
「やっぱりおかんじゃん」

おかんと言うよりは家政夫さん?
発言はおかんだよね、主夫かな?
どっちにせよ、いい嫁になれるよ。私が保証する。

「なまえちゃんだって失礼ー。」
「どこが!佐助のほうが失礼ー!」

顔を見合わせて笑う。
こういう時間がとても好き。
私は、幼いときに両親を亡くしている。
だから、両親とこんな風に笑あえたのは、ほんの数年間だけ。

「じゃあ、作ろうよ。幸村に喜んでもらわなくちゃ、ね」
「だね。なまえちゃんも食べる?」
「いいの!?…食べる食べる!」
「そうこなくちゃ!俺様頑張っちゃうよ。」

2人して厨に向かう。
佐助はとても手際がよく、あっという間!って言う感じで仕上げに掛かっていた。
私はというと、材料や道具が現代と違うので悪戦苦闘。
…でも、まぁ出来た……かな。

「それがなまえちゃんの言ってたほっとけーきってやつ?」
「そうだよ。ちょっと、味は違うかもしれないけど…幸村の為に甘さ倍増!」
「なまえちゃん分かってるねー。」
「えへへ、まあね。」

と、出来上がったものを幸村の元へ持って行くべく、道場へ向かう。
でも、向かう途中で幸村とであった。

「旦那、もう稽古終わり?」
「うむ、少し休憩しようと。…佐助、団子。」
「はいはい、分かってるねー。なまえちゃんも作って来てくれたんだよ。」
「なんと!誠にござるか!?」

ばっさばっさ。
ででで、でっかいわんこが見える!
尻尾振ってる…!
ぞくに言う犬属性ってこれのこと?か、かわいい。

「可愛い…。」
「そ、某は男にござる!か、可愛いなどと言う事は、」
「ごめん。声に出してた?ごめんね、これ食べて機嫌直して?」
「…む。なまえ殿、これは何でござろうか?」
「初めて見るもんね。前に言っていた、ホットケーキっていう甘いお菓子よ。」
「ほっとけぇきにござるか…。」

ちょっと、食べづらいかな?
初めて見るもんね。警戒するかな。

「む、誠美味にござるうううう!!」

してないし!?
なんだなんだ、食べるの早いな…
猛スピードでばくばくと食べる幸村を見て思う。

「ゆ、幸村、食べるの早くない?そんなんじゃ、喉に詰まらせ」
「…っさ、佐助…み、水…!」

…言わんこっちゃない。
でも、ここ縁側だし、すぐ水なんて出てこな…。

「はい、旦那、水。」
「あれ?どっから出てくるのー!?」
「え、企業秘密ー。」
「教えてよ!…あ、あれ雨やんでる。」

ほらね、と言わんばかりの笑顔。
忍の勘は当たるんだよーって。

勘だったのか…
種明かしして欲しかったのに、がっかり。

「あああ、もう旦那!そんなに勢い良く食べると詰まらせるよ!」
「む、むぐ…さ、すけ、水…。」
「…はあ。」
「…っく、あははははっ!」
「な、何笑ってるのなまえちゃん!?」
「佐助、今ものすごくお母さんの顔してた。」
「なまえちゃん!?」
「あははははっ!」

でもこうやって、さっきの佐助とじゃないけど、
皆で笑いあうってすごくいい。
こう、心が暖まるっていうのかな。
すごく楽しい。



――帰りたくなくなる。

どんどん湧き上る感情。
(5日目:雨上がりの団欒)

100401
……………………
もう少しで、完結…!
この後、どうしようかな…。
逆トリに発展させてみる…とか。

 

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