さて、買い物に行きたいのだが、誰を連れていくかで迷った。迷いに迷ってだした結果は、

「買い物に行きたいのですが、私の独断と偏見で、片倉さん、伊達さん、毛利さんを連れていきます」

「なぜでござるかみょうじ殿!某も連れていってくだされ!」

「俺も外に行きてぇな」

「えー!俺も連れていってよ!」

「すいません、全員連れていきたいのですが、全員分の服がないのです。なので今日のお留守番組は、また後で買い物に連れていきます。それと、何かお土産買ってきますね」

そう言って、みんなをリビングに残し、私は父と兄の部屋から、2人が着れそうな服を持ってきてそれぞれに渡した。ついでに着方も教える。

「なぜ我の分がないのだ」

毛利さんの分はここにはない。父も兄もそれなのに体格はいいので、ひょろっこい毛利さんが着れる服は無い。ていうか、本当にこの人戦国武将なの?細すぎじゃないか。

「すいません、毛利さんにはこちらに来てもらっていいですか?」

そう言って私は、二階の自室に行く。確か、たんすの一番下にいれてあるはず。無かったらどうしようか

「お、あったあった」

ラインの色もちょうど緑だ。ジャージを買うとき、他の人と被りたく無かったから緑にしたんだっけ

毛利さんがちゃんと着いてきていたので、そのまま私の部屋で着替えてもらう。

「これでよいのか」

「おお…」

意外にもジャージが似合ってたので、外国人みたいな反応をしてしまった。ついうっかり

「意外と似合いますね。じゃあ下に行きましょうか。下の2人も着替え終わっているはずなので」

「…よい」

「はい?」

「我に敬語などいらぬ。我のことは好きに呼ぶがよい」

いや、どうしてこうなった。
今の会話にそんな要素ありませんでしたよね?!

「え、も、毛利さ

「元就ぞ」

え、あの、良いんですか?」

「よいと申しておるのだ。一回で分からぬのか!」

「は、はいい!」

怖いよ。怖いよこの人。何を言ってくるか分からない「わかった。じゃあ、元就って呼ぶ。でも私、口悪いと思うよ」

「構わぬ」

その後、二人は無言のまま、リビングへ戻った。

「片倉さん、伊達さん、服は着れましたか?」

「これでいいのか?動きやすいな」

「ああ、着れたんだが、首元が多少きついな」

片倉さんそれは…

「前と後ろ…逆です、よ。っぶふ…!」

ついつい笑いを堪えきれなくなって吹き出す。どっかの猿さんは汚いー、とか言ってるけど

「…そうだったか、すまねぇ」

「いえ、言ってない私が悪いんです。タグ、といって襟についてるこれが後ろにくるように着るんです。そうすれば、楽なはずですよ」

ちょっと照れ臭さそうに言う片倉さん。自分の中で片倉さんのイメージが書き換えられた。ただの恐持ての人じゃない、気がする。

「さて、行きますよ」

片倉さんが着替え終わったので買い物組と私は玄関に向かう。
なぜか、留守番組も着いてきたので私は留守中の注意点を説明する。

「インターホンと電話…えーと、説明してないのですが、何か音が鳴っても動じないで下さい。何もしないで下さい。机の上の飲み物は勝手に飲んで良いです。お菓子も食べて良いです。ただ、怪しいとか思うなら食べなくて結構です。家の物は極力壊さないで下さい。あと、勝手に外には出ないで下さいね」

ここまで言いきって回りを見遣る。あ、真田さんがショートしかけてる。大丈夫かな…

「とりあえず、長曾我部さんに任せます。この中で、多分まともそうなので」

「おうよ!留守番くらいまかせな!気をつけてな」

「くれぐれも、よろしくお願いしますね。では、…行ってきます」

いってらっしゃい、と声がかかる。最近はずっと一人だったから、その声がとても、嬉しかった。



行ってきます
(いってらっしゃい)

些細なやりとりが、嬉しかった



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直し:111226

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