なんとか無事(…でもないけど)、私も風呂を上がりリビングに向かう。すでに眠りこけてるのが2名。うとうとと夢の世界へ旅立ちそうなのが1名。テレビを見ているのが2名。キッチン近くのテーブルに座って、みんなを見渡してるのが2名。二人とも親か!

「小十郎さん遅くてごめんなさい。今から布団敷きますね」

「全くだ。湯舟で寝るやつがあるか」

「き、肝に命じておきますね」

みんなが駆け付けた後、こってりと小十郎さんに説教されたのは言うまでもない。まあ、私だけじゃなくて佐助も怒られてたみたいだけど。思ったんだけど小十郎さんって、

「…お父さんみたい」

「ああ?」

「なっ、なんでもないです!」
声に出てたみたいで睨まれた。危ない危ない…。
私は布団を押し入れから取り出す作業に戻る。確か布団はこの部屋に全部…

「あ」

しまった、布団は4組しかなかったんだ。買い物前に3組足りないって確認したのに…買ってくるの忘れた。どどどどうしよう

「小十郎さん、佐助さん」

「あ?何だ?」

「なあに、なまえちゃん」

「布団が足りません」

今の状況をそのまま伝えると、小十郎さんと佐助に大きな溜息をつかれた。気付かなかった私が悪いんですすいませんでした、と心の中で謝っておいた。
さて、どうしたものか。ソファが空いているからまず一人は寝れるね。私がタオルケットに包まって寝ると仮定すると、私のベッドが空く。これで、6人分の寝床確保だ。
その旨を伝えると、

「俺様屋根裏で寝るからいいよ」

って言ってきた。屋根裏なんか汚いし危ない。いくら忍だとはいえ私は許さん。あくまでも、私はこの家主だ。主導権は私にあってもいいよね?

「屋根裏は駄目。汚いし、荷物置いてあるし。佐助は忍だから屋根裏なんか当たり前かも知れないけれど、この時代に忍はいません。だから普通の人としてここでは生活してほしいです。無理には言わないよ。でも、私が面倒見るって言ったんだから、皆に、佐助に不自由なんかさせたくないの……なんてね!」

控え目に口を開いたはずが、途中でヒートアップしてしまった。最後に我に返って、とって付けたように、なんてねと言ったが、二人は開いた口が塞がらぬと言ったような顔でぽかんとしていた。

「そんな風に言われたの、なまえちゃんが初めてだよ

でもね、感情なんかは捨てて、主に使える道具、それが忍。今のなまえちゃんの話を聞いて忍であることを否定された気がした。俺様は人じゃない、忍だ。この時代に忍はいない、それは俺様にとってこの時代じゃ必要ない、存在価値がないって言われているようなもの。俺は、

「黙って聞いてれば、もう!佐助、あなたは忍である以前に人なんだよ!今の言葉だと、人と忍を別物に考えてるように聞こえた。忍じゃなかったら要らない?この時代で人として生きても、幸村はあなたを捨てない。幸村はそういう主でしょう、少なくとも私にはそう見えたから。それに、その事は佐助自身がよく分かってる事じゃないの?」

最後まで言い切った。ヒートアップした私の口は止まっていなかったようだ。いつも以上に饒舌すぎて自分でも怖いや。私が口だしするようなことじゃ無い問題だったかもしれないのに、何やってんだ…
私と佐助の間に沈黙が訪れる。しかし、その沈黙を破ったのは私だ。

「さて、布団は足りませんが皆寝れる方法が一つあります。親睦を深めるのにも、とても効果的な」

「?」

「元親、慶次!ちょっと手伝って欲しいんだけど、リビングにあるものを隅にどかして欲しいんだ。ここに布団ひくから!」

今だにテレビを見ている二人に手伝ってもらい、リビングの家具をすべてよせた。そして4組の布団とマットレス、私の布団をリビングに敷き詰める。

「なまえ、何する気なんだ?」

「皆で仲良く雑魚寝!ごめんね、布団が足りなくてさ…」

「おい!敵と一緒に政宗様を寝かすつもりか!」

「今は敵だのなんだの言ってる場合じゃないでしょ。今日はもう疲れたから寝るの!佐助、幸村連れてきて寝かせて。場所はどこでもいいからね」

そういうと佐助は幸村を連れてきて端に寝かせた。ふむ、そうきたか。すると政宗と小十郎さんは反対の端に寝ることにしたらしい。ふむふむ、じゃあ私は慶次と元親の間に寝ようかな。

「元親、慶次、間で寝ていい?」

「はっ!?ばばばか!男と一緒に寝るってどういうことか分かってんのか!?」

「どういうもこういうも、私は皆と寝たいだけ。それに私の布団もひいてあるから自室じゃ寝れないし…いいでしょ?」

「いいんじゃないかい?華があって。俺は男ばっかりと寝るのは嫌だしね」

ということで、私は挟まれて寝ることになりました。そういえば、雑魚寝って一回やってみたかったんだよね!いつかまたやりたいなー!なーんて

「みんな、おやすみ」

そういうと、口々におやすみ、と返してくれた。今日一日でたくさんのことが起こったけど、ようやく落ち着けそうです。



おやすみなさい
(長い一日が幕を下ろす)

やっと休める…



110320
直し:111231

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