「こちらが頼まれた品になります。ご確認お願いします」

ある男から渡された、とある小包を手渡す。
午後11時45分。今日も時間通り


「ああ、これで間違いない。ごくろう」

「いえ。では、ご利用いただきありがとうございました」

男に告げ、ビルの屋上へと飛び上がる。幸いな事に、このビルは3階建てだ。この高さなら一飛びで上がれる。

すたっ、といつものように軽やかに着地をする。

しかし、そこには見慣れない影が一つ。


「へえ、君が兎さんかー」

人、がいた。夜に溶け込んでしまうのではと思うような、全身真っ黒の服を着た

ていうか、なんで、ここに人がいるの


―チャリン

「屋上の鍵。いやー、この建物の持ち主は話が分かる人で良かったよ」

ここに人がいることにも驚いた。いや、それ以上に驚くべきことが一つ

こいつ、今何て、呼んだ。兎?


それは、私の

「…通り名、」

「ああ、それ?今、結構有名になってる"運び屋"のことなんだけど。何か知ってる?




―"運び屋"の山田花子さん?」



運び屋は世を忍ばなくてはならない。息を潜め、人目を忍び、依頼された品を運ぶのが運び屋だ


なのに…、ああもう、有名になっているとは。そのせいで依頼が増えていたのか。



( そろそろ職業を変えるべきか )


11.03.03