頂きもの・捧げもの | ナノ


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「講演とってもよかったね」
セントシュタインではミュージカルやオペラ、劇といった芸術関連も発展しており、定期的に様々な講演が行われる。ルルーが気になっていたらしい二編に分かれたミュージカルの後編に当たるものを今回見たわけだが、敵対する集団に属した男女が愛しあい、運命のいたずらによって引き裂かれていくこの劇のラストは壮絶なものだった。役者の演技も抜群で、所々に挟まれた歌もいい曲だと思えるものばかりだった。
「ミュージカルをご覧になるときは『厚手のハンカチをお忘れなく』っていう言葉の意味が分かったよ……。最後本当に泣いちゃったもん」
それだけこのミュージカルのシナリオが自然と観客の涙を誘う優れたものだということだ。
劇場を去っていく他の観客の流れに身を任せ、ルウとルルーは劇場の外へ出た。

空が晴れ渡っている。晴れた空を見ると気持ちまで晴れてくるようで、滅多に会えないお友達に会う日がこんなに天気のいい日で良かったとルウは神に感謝した。

「そういえば」
セントシュタインは様々な店が並んでおり、服やアクセサリー、武器防具などより取り見取りの商品が展示されているため、目的もなく街を歩いてウインドウズショッピングをするのも楽しい。
窓から見える商品を眺めつつ歩いていたら、ふいにルルーが口を開いた。

「この間ケーキが美味しいカフェを見つけて……」
「え、気になる!ちょっと小腹すいてきたし、行こう!」
ルルーに案内してもらってカフェへ向かう。小さなお店で落ち着いた雰囲気が漂うところだった。
窓際の席へ座り、メニュー表を見ながら何を頼むか考える。店内からはケーキの匂いやコーヒーの香りが漂ってきて、食欲がそそられた。
「私、イチゴケーキにしようかな」
「私はチョコレートケーキにする!飲み物決めた?」
「うん、決めたよ」
二人とも注文が決まったところでウエイトレスに注文を投げかける。
これで後はケーキと飲み物が届くのを待つだけだ。

「ルルーちゃんは」
しばらくすると二人分のケーキと飲み物が運ばれてきた。可愛らしいサイズのケーキだ。これならお腹がいっぱいになって晩御飯が食べられなくなる心配もないだろう。
「イチゴ好きなの?」
「うん。果物の中で一番好きだよ。そういえばこの間おばさまがサンマロウでやってるイチゴ狩りのクーポン券を送ってくださったから、今度インテさんと行こうと思ってて。サンマロウだからおばさまにも会えるし」
ルルーのおばは相当ルルーに甘いらしく、何かと服やらその他諸々をルルーに送り付けているらしい。

イチゴ狩り、イチゴ狩り……。ルウは頭の中でイチゴ狩りの光景を想像した。リオと一緒にイチゴを採って、何かお菓子にして、それでも余ったらステラやレスターにもおすそ分けできる。うん、なかなか楽しそうだ。
今度リオにも何か果物狩りを提案してみよう。

「いいね、楽しそう」
「でしょ、イチゴいっぱい食べられるの。楽しみだなぁ」
「ふふふ、採ったイチゴでお菓子作ってルルーちゃんがインテさんに『はい、あーん』ってするんでしょ?」
その瞬間、ルルーの顔が真っ赤になった。相変わらず分かりやすい子だからいじりがいがあると言うか何というか。
ルウはルルーが思った通りの反応を返してくれたことにしてやったり、と笑った。
「ええー、恥ずかしい……」
「もう、こういう時こそ積極的にいかなきゃ!!」
「そ、そういうものかな?頑張ってみるね」
意気込むルルーを見て、やっぱりルルーは素直な子だな、と改めて思う。
「でもどうやってやればいいんだろう……。あ、そういえばまだ女神の果実を探していた頃にアリスさんが『あたしの人参やるよ』って言ってインテさんに殆ど強引に近い形で食べさせていたなぁ……。あれくらい押せ押せな感じのほうがいいのかな」
「そ、そこまでしなくてもいいんじゃないかな……」
ルウは実際にアリスに会ったことはないが、話を聞く限りでは相当な我が儘で強引に物事を進めていく女の子という印象だった。流石に彼女のようにはしないほうがいいと思うおだが……。
「普通でいいと思うよ、普通で」
ルウは念を押してルルーに伝える。
「でも、イチゴと一緒にルルーちゃんも食べられちゃうかもね」
「なっ……?!なんてことを……!」
ルウの一言でルルーはお菓子よりも甘いものを想像したのだろう、さらに顔を真っ赤にさせた。
「も、もうこの話題は終わりにしよ?ね?そんなことよりクワガタの話でもしよ!!」
ルルーは話題をそらす時になぜか「クワガタの話」へ持っていく。とはいえ、別段クワガタに興味があるわけでもないらしく、一種の口癖のようなものなのだとルウは納得するようにしている。

「あ、クワガタで思い出したんだけど」
ルウとてクワガタにはそれほど興味がないので「クワガタの話をしよう」と言われて本当にクワガタの話などしないが、そう言えばこの間クワガタに関するちょっとしたエピソードがあったことを思い出した。

「前にね、四人でクエストを受けた時に森に行った時に、レスターがステラちゃんの背中にクワガタを張り付けて……」

怒ったステラにレスターは一週間ほど口を聞いてもらえなかったという話である。
あの一週間は本当に大変だった。ステラをなだめ、どうすれば彼女の機嫌がよくなるのか、リオとレスターと頭を抱えたわけで。
自分から相談に持ち掛けたのにステラの機嫌を直すための案を出すのに詰まったらいきなりクワガタについてレスターが語りだすから、それはもう大変だった。おかげでクワガタの種類や樹液の成分について、少し詳しくなった……というのはまた別の話である。

「ルウちゃんも苦労したんだね……」
ルルーが苦笑した。
少し喉が渇いたので飲み物を口に含む。チラ、と店内に設置された時計を見てルウは思ってた以上に時間が経っていたことに気が付いた。

「そろそろ宿屋に行く?」
「そうだね。どこかでお菓子買わないといけないし」
女子会の醍醐味と言えば、何といっても夜のパジャマパーティーである。それも、男性が一人もいない空間で、お菓子を囲みながらお喋りに花を咲かせるのが最高に楽しい。
コップに残った飲み物を飲みほし、二人は店を出た。

時刻はすでに夕方だが、ルウとルルーの女子会はまだまだ終わらない。
むしろこれからが本番なのだ。



Dear Friend -終-


(リオたちは今頃何してるのかな。ちゃんとしたご飯、食べてるといいんだけど)
(インテさん、料理できるからその辺は心配しなくてもいいと思うよ。まあ、男の人が作るものだから丼物とか簡単なものにはなるけど)



おまけ

晩御飯を食べ終え、リオは思い出したようにテーブルの上にトランプを置いた。
「わざわざ持ってこなくても、トランプくらい家にあるぞ」
インテもトランプをテーブルの上に置いた。
「今日もやるか」
「ああ」
緊迫した空気が辺りに漂う。ここからは真剣勝負の時間だ。
「どっちのトランプにするか?」
リオがインテにたずねる。
「この際だ、両方使おう」
「了解」
「ルールはどうする」
リオが聞けば、インテは引き出しの中から一枚の紙を取り出した。
紙にはインテとリオが知る限りの大富豪におけるカードの効果が書かれていた。
「この際だ、全部にしよう」
「了解」
先ほどと殆ど変らないやり取りをする二人。二人とも元々口数が多いほうではないので、別に気にしない。

「じゃあ始めよう」
かくしてスーパー大富豪第一回戦、開幕である。


デュエル、スタンバイ!!
(で、罰ゲームはどうする)
(恥ずかしい話を暴露)
(……了解)


〈乳酸菌飲料〉の真巳衣さんから、うちの子とのコラボ短編いただきましたー\(^-^)/
改めまして、44444Hitおめでとうございます゚.+:。∩(・ω・)∩゚.+:。しあわせな数字ですね!わたくし今とても幸せです!!
つかリオさんよ、相手の名前くらい呼んで差し上げなさいよ(笑)インテさんのことをただの魔法戦士呼ばわりするんじゃありません(笑)君も魔法戦士でしょうが(笑)
こうして読むと、お互いのカップルの熟年夫婦感がパネェ。阿吽の呼吸とか、暗黙の了解とかを越えた何かがありますよね。
ルルーちゃんとルウのお話なんですけど、私はなぜかインテさんとリオの方に感心がいってしまう(笑)トランプ2組でルール全部ありの大富豪とかww頭良すぎwww
いやーもちろんヒロインズのおしゃべりも可愛かったですよ!再会の瞬間、前に頂いたデフォルメのイラストが頭によみがえりましたからね!!
わざわざ連絡くださったのにUpが大変遅くなってしまいまして、どの面下げてサイトにお邪魔したものか……申しわけありません_(._.)__(._.)_
また頑張ってイラストをぶん投げたいと思います。
真巳衣さん、素敵なお話をありがとうございました!


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