▽ 呼び出し
夕方。
戻ってきたリオ達は村人にこの村で起こっている詳しい話を聞いた。
少女はオリガという名であること、父親と二人暮らしだったこと、その父親はリオが堕とされた大地震の日に出ていた漁で亡くなったこと、がわかった。
「今朝のあのでかい魚は結局何なんだ?」
「僕ー、魚の影が見えたときに誰かが、来たぞ、ぬし様だ!、って言ってたのを聞いたよー」
「そういえば言ってたな」
「じゃああれは、この辺を守ってる海の神様なんだね」
何かの本で読んだ、とルウは納得した。リオも人間界のめぼしい伝説などは勉強していたから、何となく理解はできた。
「ぬし様は神様なのー?そんなふうには見えなかったけどー」
「…においか」
「うんー、何かこう、神聖だけど胡散臭い、みたいなー?」
どっちかにして欲しいが、レスターがそのまま感じたことだから仕方ない。
とりあえず、暗くなってきたのでオリガの家に向かった。
◆ ◆ ◆「あ…旅人さん、来てくれたんですね。狭いですけど、どうぞ入ってください」
オリガは三人を中へ招き入れた。
入ってすぐ左の隅に小さな囲炉裏と、奥に粗末なベッドがあるだけだ。
灯は囲炉裏の火だけで薄暗かった。
「あたし、村の外から誰かが来るのを待ってたんです。あの…」
「オリガ!!入るぞ!」
オリガが話し始めると、急に扉が開き男が入ってきた。
「ん?見かけない顔だな…」
漁師ではない出で立ちの男だった。ルウは顔にこそ出さないが、怪訝そうな目を向けた。
「…まあいい。オリガ、来なさい。村長様がお前をお呼びだ」
「あ、はい!」
オリガが返事をすると、男は当然といったふうにそのまま出ていった。
「せっかく来て貰ったのに、ごめんなさい。あたし、行ってきます」
オリガは走ってさっきの男を追いかけた。
「…あの男の人、ノックもしなかった。オリガちゃんは女の子なのに」
ルウが不機嫌そうに言った。
「…とりあえず、どうする」
「僕、村長さんとオリガちゃんが気になるなー」
「…行ってみるか?」
「盗み聞きは、ちょっと…」
「情報は大事だ」
うーん…、と一同、沈黙。
「…やっぱり僕行くよー。リオ君とルウちゃんはお留守番してて良いからさー」
レスターは自分が乗り込む、と提案した。ルウは最後まで渋っていたが、レスターを信用することにして、夜の浜に送り出した。
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