アリアドネの糸 | ナノ

▽ 誤解

「旅の方。夜になったら、あたしの家に来てくれませんか?浜の東にある、小さな家です。お聞きしたいことが、あるんです…」

村人が目の前の魚に歓喜している間から、祈りを捧げていた少女がリオにそう言った。

リオが小さく頷くと、少女はさっき言った家――とは程遠く、小屋の方が正しいかもしれない――に逃げるように去っていった。

「…ルウ、お前、着替えは」

「う…、」

「まずは買い物からかなー?」



◆   ◆   ◆




着替えのないルウの為、三人は村の防具屋に来た。

「せっ、1000G!?そんな高いもの、貰えないよ!!」

ルウは身かわしの服を気に入ったのだが、値段を見てギョッとする。

「じゃあお前は踊り子の服を着たいのか?」

「僕は大歓迎なんだけどなー」

ルウはレスターの頬をグーで殴った。

「…良い機会だからそのまま通常装備にしろ。レザーマントは売る。良いな」

リオに強く言われるとルウは頷くしかない訳で。

「……はい」

素直にリオに従った。

「リオ君ー、ダーマの塔でのこと、気にしてるー?」

会計をしに行ったルウを見送ってから、レスターが気遣わしげに尋ねた。

「…ルウに傷がついたのは俺のせいだからな。」

ルウはジャダーマ戦の時に腕や脚に切り傷を負った。

浅いものだったのでもう殆ど消えているし、本人はさほど気にしていない様子。

だけどリオは配慮不足だった、とかなり悔やんでいた。

「お待たせしました、っあ」

ルウが店から出てきた。そして珍しそうにリオを凝視する。

「…何だ」

「天使の服、懐かしいな…って思って…」

「たまには、な」

「……………………え?」

レスターが素っ頓狂な声をあげた。

「リオ君って、天使だったのー?」

「……?」

「知らなかったのか?」

「リオのこと、普通の人間じゃない、って言ったよね?」

「まー確かに言ったけどねー?」

「…人間、は前提だったのか」

「そーそー、そういうことー」

「驚かないんだね」

至って普通なレスターに、ルウは尋ねた。

「大抵のことはねー。あ、でもやっぱり天使だった、っていうのは衝撃的だったよー」

…しばし沈黙。

「…夜まで、G稼ぐか」

「「賛成ー」」


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