アリアドネの糸 | ナノ

▽ 夕方の旅路

リオ達がダーマ神殿に戻ると、大神官が既に戻っており、神殿は正常に機能していた。

「おお!そなたはリオ殿!ダーマの塔では世話になった」

リオ達が挨拶に行くと、忙しいのにもかかわらず親切に応対してくれた。

「…一体、あの果実は何だったのじゃろうな」

大神官は、俯きながら話し始めた。

「わしは確かに人々をより良い道へと導く力を求めていた。あの果実はその力を与えてくれたのかもしれないが、わしはその力に溺れてしまった。あの果実は、人が食べてはいけないものだったのじゃろう」

大神官が、顔を上げた。

「そなたには感謝してもしきれない。そなたが止めてくれなければ、わしは世界を滅ぼしていたのかもしれないのじゃからな。せめて、我が転職の力をそなた達の旅に役立てて欲しい」

リオ達は大神官との話を終え、ダーマ神殿を後にした。



◆   ◆   ◆




「そういえば、リオ君とルウちゃんはどうして転職しなかったのー?」

日が傾き始めた頃、ダーマ神殿を出発したリオ達に、レスターが素朴な疑問を投げかけた。

「…別に。面倒なだけだ」

「私は、僧侶としてはまだまだ未熟だし…。中途半端にしたくないから」

「ルウちゃんは真面目なんだねー」

リオ達は南に真っ直ぐ進んで行く。

「リオ、何処に行くの?」

ルウは何となくついて行って歩いてはいるが、リオは何処か行くあてが決まっているのだろうか。

「…ツォの浜だ」

「どんな所?」

「海沿いの小さな村でねー、皆、漁をして生計を立ててるんだよー」

「ふーん…」

何だかルウが目的を把握しきれてなさそうなので、リオは小さく溜め息を吐いた。

レスターが苦笑する。

「…その浜から転職に来ていた奴がいてな。その漁師から、もう漁をしなくても良いんだ、とかいう話を聞いた」

「あ、だからその原因を調べに行こう、って訳だね」

「当たりー♪」

「でも、いつの間にそんなこと聞いてたの?」

「小耳に挟んだだけだ」

「リオ君は耳が良いんだねー」

レスターは二人の会話から、性格や雰囲気をさりげなく学ぶ。

「…夜には辿り着く予定だ。辛かったらいつでも言え」

ちょっとしたリオの気遣いが窺えて、ルウは自然と頬が緩んだ。

「うん」

レスターはそんな二人を見て、こっそりとほくそ笑むのだった。

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