▽ 伝説は強し
「おー見えてきた」
セントシュタインの城下街。入口から真っすぐ前を見上げると、高台のセントシュタイン城が町を見下ろすかたちで建っている。
ふと、左側に窓が沢山並んだ大きな建物が目に入った。
「あ、ソコって宿屋じゃん? あの子どーなったかな。知らない仲じゃないんだし、見て行こーヨ!」
サンディはまたふよふよと視られないのを良いことに勝手に宿屋に入って行った。
リオも気になっていない訳ではなかったからまあ良いか、とサンディに続いた。
◆ ◆ ◆「ちょっとルイーダ!何考えてんの?」
突然、女の人の声が耳に入った。
「この子に宿屋を任せる?ただでさえ今危ないっていうのに、あんたここをつぶすつもり!?」
かなりご立腹のようだ。ルイーダの隣に立つリッカは俯いていた。
「ルウ! あなたを一緒に行かせたのは一応護衛のためだけれども、本当にこんな……あなたはそれでいいの!?」
ルウはこくんと頷いた。
「まあまあ落ち着いてよ、レナ。私がただの女の子を連れて来ると思う? こう見えてもリッカさんはすごい才能の持ち主なのよ。きっとこの宿を救ってくれるわ!」
レナと呼ばれたさっきの女の人は、怪訝そうな顔をした。
「………あんた私を誘った時もそんなこと言ってなかったっけ? 私に金庫番の才能があるとか……。自信満々にこの宿の救い主を連れてくるって言うから期待してたのに……それがこんな小娘? ……アテにしたのが間違いだったわ」
ここまで言われてはリッカも黙ってはいられない。
「ちょっと待って下さい! 私、頑張りますからっ。宿屋のことは父からいろいろ教わっていますから」
レナが少し、反応を見せた。
「ふーん。あなたの父親も宿屋人だったんだ? 父親の夢を娘が継ごうってわけね。その心意気は買うけどさ、宿屋をやるっていうのはそんなに甘いものじゃないのよ? だいたい、あなたに教えたというお父さんがどれほどの人だったか……」
ルイーダの目が光った。
「その言葉を待ってたわ! さぁリッカ、今こそアレを見せる時よ!」
「……あ! わかりました、アレですね!」
シャキィィィィーン!!!
リッカは宿王のトロフィーを取り出した!
「そ……っそのトロフィーは!?」
レナが驚愕の声をあげると、ルイーダは勝ち誇った笑みを浮かべて言い放った。
「ええ、そうよ! セントシュタイン王から伝説の宿王に贈られた記念のトロフィー! これこそ宿王の実力と、彼女がその血を引くまごうことなき証よっ!!」
「「「で、伝説の宿王の娘……! は、ははぁーーっ!!」」」
ルイーダの言葉を聞いて、彼女とルウを除いた宿屋に勤める人達は皆、リッカにひざまづいた。
「あ、あの……皆さんそんな平伏さなくっても……」
prev /
next