アリアドネの糸 | ナノ

▽ 新たな目的

リッカのセントシュタイン行きを見送ってから、リオはサンディを伴って峠の道に向かった。

「よーし! それじゃ乗り込むわヨ!!」

リオが触れたときはびくともしなかった天の箱舟の扉が、サンディの手にかかるといとも簡単に開いた。本当にサンディはこちら側の関係者だということを思い知らされる。

サンディはふよふよと飛んで箱舟の中に入った。リオもそれに続く。

「これが箱舟の中ヨ! なかなかイケてんでしょー?」

中は眩しい黄金色で統一されていた。黄金は人間界では貴重な金属と聞いた。いかにこの箱舟が素晴らしいものかがわかる。座席や天井など、ところどころある見事な細工と装飾も目を惹いた。

サンディはくるくると飛び回りながらさらに続ける。

「でもまだ地味じゃない? できることならもっとカワイクしたいのよねー。ゴールドの中にきらきらピンクのラインストーンも並べてさ、アタシ色に染めたいワケよ」

こんな豪華な装飾の中にまだ派手さを追求するのか。リオは頭が痛くなった。抗議と催促の意味をこめて、サンディを無言でじろりと睨みつける。

「あによー。早く出せっての? ……やってやるっての!! ぶっちゃけアタシも天使界どーなったか気になるしね!!」

サンディはちょっと怒って箱舟の運転席の操作パネルの所まで行き、ボタンを押した。

箱舟は何の反応も示さない。

「ダメかあ……。アタシ的には天使を乗せれば動くと思ったのに……」

「……」

「なっ何よぅ! だいたいあんたこそ天使のくせにハネもワッカもないとかありえなくない!?」

「俺は何もしていない」

「少しは悪いと思いなさいよ! どーしよう、このまま帰れなくなったら神様に……」

長々とひとりで喋っていたサンディがぴたりと動きを止めた。

「……神様!? そう、神様よ!」

「は?」

「どーしてこんなに困ってるのに神様助けてくれないの? ……まさか、アタシ達が見つけられないとか!? そうよ、きっとそうに違いない!!」

「……はあ、」

リオはただぽかんと聞いているだけだ。

「だったら話はカンタン!! リオがいっぱい人助けをして星のオーラをたくさん出せば、きっと神様が見つけて助けてくれるわ!!」

「そんなに上手くいくか?」

「いくいく! 希望みえたよ! よーし、セントシュタインへ人助けにレッツゴー!!」

「…………」

[サンディが仲間になった!]

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