▽ それぞれの出発
リッカがルイーダの誘いを受けてから数日後。峠の道の土砂崩れは取り除かれ、リッカがセントシュタインに旅立つ日が来た。
リッカは自分の家の前で、祖父に別れの挨拶をした。
「離れ離れになっちゃうけど、元気でね。おじいちゃん」
「お前も慣れない都会暮らしで苦労も多かろうが、くれぐれも身体を壊さぬようにな」
「お孫さんのこと心配でしょうけど、私もできるだけサポートしますから、ご安心くださいな」
「おお! ルイーダさん、よろしくお願いしますぞ」
最後にリッカは、祖父の後ろにある家の陰にいるニードに声をかけた。
「ニード!! ここの宿屋、ニードが継いでくれるんでしょ? わがままだけど私、閉じたくなかったから……。ありがとう! 感謝してる!!」
「親父が働けってうるさいからな。別にお前のためじゃねーよ」
これが俗に言うツンデレである。
「リオもありがとう。すごいよね、どこからかトロフィーを見つけてきちゃうなんて……まさか本当に天使様だったりして……」
「!!」
リオは僅かに表情を変え、身体を強張らせた。
「……なーんてね」
リッカがそう言うと、リオとルウはほっと胸を撫で下ろした。
「リオももう故郷に帰るんでしょ? セントシュタインに来ることがあったら絶対宿屋に寄っていってね!!」
ルウが先ほどから何か言いたげにしているのに気づいたのか、リッカがルウを小突いた。
「あ、えっと……昨日の夜はその、ごめんなさい」
今朝ルウが目覚めると、ベッドに入ってきちんとブランケットをかぶっていた。そして自分の記憶では机に突っ伏していなかったか、と視線を向けると、リオが頬杖をついて寝ていたのである。
現場を見たリッカ曰く、「起こしちゃ悪いと思って」とそのままにされていたらしい。リオは別に何も言わなかったが、考えなしに眠りこんでしまったのは申しわけなかった。
「それからリッカのこと、本当にありがとう。ルイーダも助けてもらえて……。早く、リオさんが天使界(こきょう)に還れることを祈ってる」
「……あんたも、気をつけて」
「うん、それじゃあ」
「じゃあ皆、今までありがとう!!」
リッカ達は、セントシュタインに向けてウォルロ村を出発した。
「さーて、あたし達も出発しますか。峠の道へレッツゴー!!」
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