▽ 宿王の血筋
ウォルロ村に戻ってきたリオとルウは、まずリッカの家に寄った。しかしリッカはいなかったため、二人は彼女が経営している宿屋へ向かった。
ルウを置いて先にウォルロ村に来ていたルイーダは、宿屋でリッカと何か話をしていた。
「ルイーダ! リベルトさんは見つかったの?」
「いいえ。二年前に亡くなってしまったそうよ」
少し沈んだ声で、ルイーダは答えた。しかしすぐに明るい顔をして、カウンターの奥にいたリッカをルウに紹介した。
「でも大丈夫! 代わりに彼女を連れて行くわ」
「あなた……リッカ!? リベルトさんってどこかで聞いたことあると思ってたけど、リッカのお父さんの名前だったんだ!! じゃあ、リッカがセントシュタインに来てくれるんだね!!」
ルウは手放しに喜んだ。しかし当の本人にその気は無いらしく、断る意思を見せる。
「私には人の才能を見抜く目があるのよ。リッカは確実に宿王の血を引いてるわ!私の目に間違いはなくてよ!!」
ルイーダは自信満々に言いきった。どこからそんな確信が持てるのか。
「……宿王?」
「リオは知らなかったのね。宿王っていうのは、セントシュタインで開かれる宿屋の世界大会で、一位を獲った人がそう呼ばれたのよ。でも彼はセントシュタインの宿屋を辞めて、ウォルロ村に引っ込んじゃったの」
ルイーダは、なぜ宿王とまで呼ばれた人がその夢を捨て去ることが出来たのかが疑問だと言う。
リッカは自分の父親が宿王と呼ばれていたことが信じられないのか、頑なに首を縦に振ろうとしない。
「と、とにかく! 私はセントシュタインには行きませんから!!」
リッカは夕食の支度をすると言って家に帰って行ってしまった。
ルイーダの言っていることは本当だろう。リッカはセントシュタインに行くことを渋っているが、彼女の本当にやりたいことは何なのだろうか。リオはそれを知りたくなった。
「結構、頑固な子ね。これは長期戦になるかな?」
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