▽ 救出、尋問
「天使様!!」
リオが痛恨の一撃を受けたのを見て、ルウは背中に背負っていた槍を構えた。
「“ベホイミ”!!」
[ルウはベホイミを唱えた!]
なんとルウは、リオに回復呪文をかけた。リオの傷は完全に回復した。
「天使様!! 大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ大丈夫だ。助かった」
身軽になったリオは跳び上がり、相手に向かって体重を乗せて剣を突き刺した。
「ギャオーーーーーーーッ!!」
ブルドーガは耳をつんざくような断末魔を上げて、倒れた。
[ブルドーガを倒した!]
「さすが天使様!!」
「あんたがベホイミを使ってくれたおかげだ。あと俺は天使じゃなくて、リオ」
「あ……っ」
ルウはしまった、という顔をした。重大な何かがありそうだ。しかしあえてリオはその場で聞かず、話を逸らした。
「……それより、ルイーダは?」
「ここにいるわ。あなた、見かけによらず強いのね。助かったわ。戦いのどさくさでなんとか足も抜けたの」
「良かった……。ごめんなさい、ルイーダ、私――」
「何を謝ってるの? 解決したからそれでいいじゃない! まぁまずはここから出ましょう」
◆ ◆ ◆リオは無事にルイーダとルウと合流し、キサゴナ遺跡を抜けることができた。
「あー! もう薄暗い遺跡はたくさん!」
ルイーダは気持ち良さそうに伸びをした。
「そういえば、あなたの名前を聞いていなかったわね」
「……リオ。ウォルロ村からあんた達を捜しに来たんだ」
「え? ウォルロ村? ……ああ!! ウォルロ村に用事があるんだったわ!!」
リオの口からウォルロ村と聞くなり、ルイーダは
「お礼はまた、改めて。adieu!」
と言って一人でそのまま走り去ってしまった。
「……え!? ちょっとルイーダ!」
置いて行かれたルウは素っ頓狂な声をあげた。追いかけようとして走り出したところをリオはルウの腕を掴んで阻止した。
「痛……っ! な、に?」
思いのほか強く掴んでしまった。しかし後悔はしなかった。リオはそのままルウに尋ねる。
「何故、始め俺を天使だと言った」
ルウはみるみる顔を青ざめた。
――やはり何かある。
リオは意地でも聞き出そうと決めた。
「な、何でそんなこと――」
「答えろ」
リオはルウの腕を掴む手にさらに力を込めた。
「痛っ! どうして!? リオ、さん……は、聞かれたくないことを聞かれて素直に答えるの?」
ルウも聞かれたくないのか、かなりガードが硬い。仕方ない、押して駄目なら引いてみよう。
「……わかった。あんたの質問に何でもひとつ、答える。できたら、俺の質問に答えろ」
ルウは少し考えるそぶりを見せてから言った。
「……リオさん、あなたは人間なの? 私、何回かウォルロ村に行って、あなたをみたことがあるの。だから、正直に答えて」
ゆっくりと、押し出すようだった。
随分痛い所を突いてきたな、とリオは片方の口角を僅かに引きつらせた。何でも答えると言った手前、今更無かったことにはできない。
「…………」
リオは暫し迷ったが、自分をみたことがある、と言ったときのルウの悲しげな顔の理由を知りたかった。
「……あんた、俺が自分が天使だって言ったら信じるか?」
「……やっぱり」
やっぱり、とはどういうことだ。リオは怪訝そうな顔を向けた。
「言ったでしょ。私、ウォルロ村でリオさんを視たこと≠ェあるの」
ルウが先ほどの発言を言い直すと、リオはルウの言わんとしていることが解った。まさか、というふうに目を見開く。
「実はね、私……
天使様とか、霊が、視えるの」
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