▽ 出逢う
リオは突進された誰かを、とりあえず受け止めた。
「……大丈夫か?」
「はっはぃ!! すいませんすぐ退けます!!」
少女だった。少女はリオに声をかけられるとずざざっ!とものすごい勢いで離れた。さらにリオを見て目をまるくし、
「……天使……様?」
こんなことを呟いた。
咄嗟にリオは身体を強張らせた。この少女はリオの正体を見破ったのか。それとも、ただの偶然
少女はリオの変化に気づかず、慌てた様子で懇願した。
「お願いです、助けてください!! 早くしないとルイーダが……!!」
リオはルイーダ、という名前を聞いてはっとした。こいつは、ルウだ。
「お前……何者だ?」
「私、ルウです! お願いです! ルイーダを助けてください!!」
――そういうことを聞いた訳ではないのだが。しかし、ルウの焦り方を見るとかなりやばい状況らしい。天使云々のことは後で問いただすとして、今はリッカの心配事の方が先だ。
「すぐ案内しろ!」
リオは珍しく大声を出した。
◆ ◆ ◆ルウが走るのに着いていくと、広いフロアに来た。真ん中に誰か座り込んでいる。ルウはそれに向かって声をかけた。
「ルイーダ! 大丈夫!?」
「ルウ! 全然ダメ、びくともしないわ」
ルイーダは足を瓦礫に挟まれ、動けなくなっていた。
「天……人を連れて来たよ!!」
「あらビックリ!! こんなところで他の人に会うなんて、珍しいこともあるものね」
ルウの説明によると、ルイーダは突然現れた魔物によって落とされた瓦礫の餌食になってしまったらしい。ルウだけではどうにもできなかったようだ。リオが瓦礫を退かそうとルイーダに近づくと、
…………ズズ…
ドン!!急にリオ達のいる階が揺れだした。離れた所で天井が崩れ、床に落ちてきた。
「来たわ! ヤツよ!」
ルイーダとルウが目をやった方をリオも見た。
ズン、
ズン、
ズン!!音を響かせながら、小さめの象くらいの大きさで角のある四つ足の獣が歩いて来た。
「ブルドーガが現れた!」
「チッ……こんなのが出るなんて聞いてないぞ」
リオはまず剣を抜き、相手の反応を窺った。向こうはなかなか攻撃的な様子を見せてきた。容赦は要らないとリオは悟り、地を蹴って攻撃を始めた。
◆ ◆ ◆斬りつけては退けて回復することを繰り返し、互いに疲れが見え始めた。
リオにもう何回目かわからないブルドーガの攻撃が炸裂し、“ホイミ”をかけようと剣を翳(かざ)すが――
[MPが 足りない!]
長い攻防戦で使い果たしてしまったようだ。こんなことなら薬草を買っておけば良かった、とリオは舌打ちして剣を握り直した。回復ができないとわかると、余計に疲れが意識されてくる。
リオは剣を振り上げてブルドーガの脚に斬りつけた。
[リオの攻撃!]
今のは当たりが良かった。そのかわり相手に何かスイッチを入れてしまったようだ。
[ブルドーガの攻撃!]
リオは後ろに飛びのいた。だが着地に失敗し、膝をついてしまった。平気そうな顔をしていても疲れはごまかせなかった。
[痛恨の一撃!]
リオは追撃を避けられなかった。顔に衝撃がきて、口の中に血の味が広がった。
「っつう……」
「天使様!!」
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