▽ 衝突。
リオは力任せに剣を振り、メタッピーを思いっきりぶん殴った。
――ガチャンッ!
動力源を壊されたメタッピーは、吹っ飛ばされて地面に落ちた。
[魔物の群れをやっつけた!]
リオは、ウォルロ村からセントシュタインへ向かう道の途中を南にそれたところにある、キサゴナ遺跡に来ていた。
はじめに入ったときは石碑に道を塞がれていたが、突然現れた男性の霊によって事なきを得た。よく考えてみれば雰囲気が誰かに似ていた気もするが、はっきりとはもう思い出せなかった。
ここ、キサゴナ遺跡は、いくつかの六角形の部屋で構成されており、少し薄暗かった。リオはとりあえずしらみ潰しに歩きまわって、ルイーダとルウを見つけることにした。
◆ ◆ ◆――少女は、走っていた。
はやく、ハヤク、早く。今まで親代わりに養ってくれたあの人が襲われてしまうかもしれない。死んでしまうかもしれない。
――少女は、祈った。
あぁ、セントシュタインの、ウォルロ村の、守護天使様。どうかあの人をお救いください。
……とく、ん……
――少女は、感じた。
いつも肌身離さず持っている純白の羽根が、ほんの少し暖かくなったことに。だが、少女にとってこの羽根は普通の羽根ではないから、そんな変化はよくあることだった。
――天使様が、近くに?
そう羽根が教えてくれたようだった。少女はまた、走りだした。
◆ ◆ ◆……とく、ん……
「……?」
急に、暖かくなった気がした。
何ごとかと探ってみれば、リッカが渡してくれたあの羽根だった。
どうして赤いままなのかはわからなかったが、確かにリオの血のはずだ。遥か上空の天使界から生身のままで落下して、出血を伴わないわけがない。
――いや、今は羽根のこの不思議な変化について考えるべきだ。リオは独り、頭(かぶり)を振った。
羽根の小さな変化は、まるで誰かを呼んでいるような気がした。共鳴、とでも言えば良いだろうか、そんな感じだ。
ふと気配を感じて、耳を澄ましてみた。――走っている足音が聞こえる。
あながち間違いじゃなさそうだ、と確信を持って足音の方へ向かって行った。そして、角を曲がろうとしたとき、誰かが飛び出してきた。
「!!」
「……ゎぷっ!!」
リオは誰かに突進された。
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