▽ 吉報と凶報
「土砂崩れってこれかよ。正直、なめてたぜ」
(バギで飛ばせるかと思っていたが……甘く見ていたな)
土砂崩れは、細い峠の道をしっかりと塞いでいた。見上げるほどに土砂が積まれている。リオはバギで吹き飛ばすつもりだったようだが、到底無理そうだ。
「これじゃ、オレとリオだけでなんとかできないじゃないか!! ……くそっ! これで親父の鼻をあかして村のヒーローになれたってのに!!」
ニードは悔しそうに目の前の土砂を蹴った。
「? そこに誰かいるのか?」
土砂崩れの向こう側から声が聞こえた。
「お? 向こうに誰かいるみたいだ。おーい! ウォルロ村のイケメン、ニード様はここだぞー!!」
(……自分で言うか)
リオは心の中でツッコミを入れた。
「おぉ! それは良かった!! 我々はセントシュタインの兵士だ。王の命により土砂を取り除きにきたのだ」
「聞いたか? リオ。セントシュタインの王様が動いてくれたみたいだぜ。もう問題は解決したも同然だな。なーんだ、オレ達が来る必要なんてなかったぜ」
ニードがセントシュタインの兵士の声を聞くと、さっきの様子とは打って変わって余裕そうにやれやれと首を振った。
「ウォルロ村の者よー。ひとつ急ぎ確認したいことがあるー」
「なんだ?」
「大地震の後に、ルイーダという女性が村に来ていないだろうか? 酒場につとめるご婦人だが、ウォルロ村に行くといって出たきり消息が知れないのだ」
リオとニードは顔を見合わせた。互いに心当たりはない、というように首を振る。
「いいや、来てないぜ。だいたい、そんな女がウォルロ村になんの用があるってんだ?」
確かに、これといって観光地でもないウォルロ村に、ご婦人が訪ねてくる理由は思い当たらない。
「そうか。実は彼女は、ルウという少女を連れてキサゴナ遺跡に向かったという話もあるのでな。だが、その遺跡もいつの間にか道がふさがってしまったようでたしかめる方法がないのだ。とにかく、村の者にはもうすぐ道が開くと伝えてくれ」
「オーケイ、このオレがキッチリバッチリ伝えとくぜ」
ニードがそう答えると、土砂の向こう側から作業が再開される音が聞こえ始めた。
「……キサゴナ遺跡って何なんだ?」
「あー、キサゴナ遺跡ってのはな、この道が開通する前に使われていた古い遺跡の通路さ。魔物は出るし、崩れやすいしで、今では誰も近づけねーけどな。」
ニードは割と丁寧に説明してくれた。どうやら歴史の勉強が不足していたようだ。リオは内心、生物学書と地図ばかり眺めていた見習い時代の自分を恨んだ。
「そこにルイーダとルウが……?」
「女だけで入っていったなんて考えられないけどな。とりあえず村にもどろうぜ」
「あぁ……」
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