アリアドネの糸 | ナノ

▽ 完全復活

リオはいらいらしていた。

リオが転職を決めたのは、魔法戦士だった。それ自体には何も問題は無い。
問題は、その職に就く為に悟りを啓かなくてはならないことにあった。

ダーマに滞在しているベテラン魔法戦士のスカリオによると、魔法戦士はエレメンタルパワーを自由に操る聖なる騎士だそうだ。

フォースを纏い、華麗に、鮮やかに敵を葬り去る!!

…と熱弁された。

スカリオに命じられたトレーニングをこなさなけば、大自然に眠るパワーを使いこなすことも、フォースを宿すこともできない。

とにかくさっさと済ませて、リオ達はスカリオの元へ戻ってきた。

「指示通り、メタルスライムを倒してきた」

トレーニングの内容は、魔結界をはった状態でメタルスライムを3匹倒すことだった。

「う〜ん、パーフェクト!」

リオのこめかみに青筋が立った。

「ああ……。わかる。わかるよ。キミのそのフォースパワー……」

スカリオは恍惚とした表情で呟く。
リオはだんだんうんざりしてきた。

「確実にチカラがついているね。流石は、エリートであるボクが考えたトレーニングだけのことはある。完璧なトレーニング方法さ……」

「………」

「さあ、キミにも見えただろう!魔法戦士の悟りが!これでキミも魔法戦士の一員さ!」

[リオは魔法戦士の悟りを啓いた!]

「…ふん、悟りさえ啓けたら後は自分次第だ。行くぞ」

スカリオのちょっとナルシストな感じが、リオは気に入らないようだ。

後日談だが、トレーニングの時からずっと苛立っていて、ルウもレスターも何となく近寄り難かったそうな。

早速リオはダーマ神殿の大神官の所に向かい、魔法戦士へと転職を済ませた。

「…全く変わった気がしないんだが」

リオの機嫌が何となく通常寄りになったのか、彼から会話が発せられた。

「そんなもんだよー。それじゃ装備を見直してー、また修業だねー」

「あぁ」

「もうひと頑張りだね、リオ」

「そうだな。ルウもレスターも、俺に合わせて無理する必要はないんだぞ」

「うん」

「大丈夫だよー」

手頃な値段の装備を一通り揃えて、リオ達はまたダーマ神殿の周辺の草原に繰り出した。



◆   ◆   ◆




リオ達が修業を始めて二週間ほどが過ぎていた。

ひたすらに魔物を倒して経験を積み、気がついたらそのくらい経っていた、と言った方が正しい。

その日の夕方になって、何十匹めかは忘れたが、とどめを刺したあとにリオが唐突にぽつりと言った。

「…そろそろ、行っても良い頃か」

それを聞いて、横に展開していたルウとレスターが動きを止めた。

「私は、もう大丈夫だよ!」

「僕なんかいつ行くのかなーって思ってたくらいだよー」

そして、二人とも笑顔で答える。

ルウも無事ショックから立ち直れたようだ。前回から活躍していないレスターは力が有り余っているらしく、最近は魔物に容赦がない。

「そうか、待たせて悪いな。今日はもう休んで、明日の朝に出発しよう」

リオも新しい職業の戦い方に慣れ、準備は万端といったところだ。

「「了解(ー)!!」」

リオも自然と笑顔になった。

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