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唐突な自分語り
2023/07/23 06:10
過去の仕事の話。



今日は少し振り返りがしたいので趣向を変えた雑記(挨拶)

かなり前にはなりますが、誰しもある新卒ほやほやの時の仕事の話です。私はカウンセラーか管理栄養士になるかで、はちゃめちゃに悩んだ学生時代を経て、精神科病院の管理栄養士として晴れてスタートを切ることになりました。

仕事はそりゃあ毎日楽しかったです。患者さんのデータを見比べながら理論と実践を毎日繰り返して、応用問題を解いていくみたいで。さらに患者さんと話をして、食事や栄養についての知識を専門家ぶることなく、あれこれ独り言みたいにお喋りをして仲良くなっていく。リアルでペルソナコミュの好感度稼ぎみたいなことをしてました。

でも病院側もただで地域のど真ん中に建ってるわけじゃないから、潰れないように運営をしていかないとならない。つまりここで管理栄養士に課せられるのは、ポイントを稼ぐことなわけです。1点10円みたいな診療報酬というシステムがあるじゃないですか。細かいルールは変わってるかも知れないですが、あれって特定の疾患を持った患者に対し、管理栄養士が栄養相談することで加算されるんですよ。

当時、同級生だった病院栄養士達は当たり前にバリバリこなしていたことですし、自分が勤める職場や職員達も大好きだったし、何かしら職場に貢献したかった私は、主治医の先生に頭を下げて無理を言って、一人の腎臓が悪い女の子の栄養相談を取り付けたんですよね。

カルテで下調べをしていくうちに、ここでは書けないような悲惨で壮絶な過去が書き連なっていて、主治医の先生には「まずは友達になってあげてください」と言われたのを強く覚えています。その言葉が一般病院に勤める同級生の話とはまるで違う反応で肩透かしを喰らいつつも、いよいよ栄養相談当日の日。資料も話す内容も全て精査して、その人に合うものを作ってきたつもりだった。

いざ女の子と話をしてみれば、終始「……」という沈黙。

衝撃的でした。彼女の心をどうやっても開けない。彼女の反応によって沈黙の海底へ一気に沈められた私の体に、そればかりがおもりのように重くのしかかっていました。彼女を取り巻く現実は金銭面でも、精神面でも、肉体面でも、全てにおいて八方塞がりで、栄養や健康なんて自分が知らない未知のものはどうでもよかった。どうにかしようと改善する意味が感じられないほど、彼女の中での優先順位が低かった。私と話をしたところでどうにかするつもりもなかった。でも私は管理栄養士として仕事をしないとならない。これからの病院の意向と患者さんのこれからの板挟みみたいなものに常に苦しんでしまいました。

私が今まで進んで学んでやってきたこと、絶対だと信じていたこと、誇らしいと思っていた資格と才能は、金も余裕もない患者さんから診療報酬というポイントを絞り取るためにあるのかと、その非情さがとても悔しくて、同時に悲しかったのを覚えています。

正義のヒーローのように、悪いやつから金を巻き上げているんだ!と思うことが出来ればよかったのでしょうけど、目の前に転がってるのは今にも倒れそうな病人です。ましてや腕や足、内臓が傷ついてしまった人がいるように、たまたま傷を負った箇所が心や脳だっただけの人間です。

確かに当時は私も融通が利かず、潔癖すぎた部分もあります。何より能無しの雑魚だったと自覚していますが、本当に弱りきってしまった者からさらに何かを取り立てる行為が嫌で嫌でたまらなかった。私が本当にやりたかったのは、こんな仕事だったのかと深く失望しました。

今思うと、点数をバンバン取って病院が存続し続けることで彼女らの入院する場所や居場所を提供出来ているのではないか、と考えることも出来ますが、やはり深いところで納得は出来ないですね。今のトークスキルを持ってしても、やはり彼女を変えられない…というか人間の根幹を強く変えることは出来ないという、他人が行えるサポートの限界を知ってしまったので、身を滅ぼすくらいの勢いの無理・無茶はしません。私が病んでしまえば、まず私が一番に悲しい。だから周りもきっと悲しい。それに気づけただけでも儲けもんだと思うんですよね。

それからまた色々あって現在、管理栄養士としての仕事はしていませんが、私生活で栄養に気をつけて自分が美味いと思うご飯を作って誰かに美味しいと言われるだけの日々で充分でした。調理師と栄養士のいがみ合いを現場で見ているのも嫌だし、一般企業の方が働きやすい。環境が変わって本当によかったと思っています。

特に親なんかは資格を活かせないことを嘆いていますが、薄給激務で劣悪環境ガチャみたいな領域ですし、私には不要な資格でした。同級生でライフスタイルが変わった途端退職したり、継続出来てる人がマジでいない。続けられている方はよっぽどいい環境で勤められているんでしょうね。尊敬します。

最後に、私のあの時の選択は、逃げだと思います。でもあの時あの子に衝撃を与えられて、色々と気づかせてもらえなかったら、別の場所に行った時にまた別の理由で死んでいたと思います。このサイトを続けている時点で生き恥晒しマシーンと化しているのが現在進行形なんですが、逃げることは悪いことではないのと、生きるために逃げるならそれは戦略的撤退ですし、大いに逃げてくれって思います。(誰かを傷つけようとか明確な悪意があって行動したことから逃げるのは論外ですが)

地獄や修羅の道があったとしても、いつか終わる時、終わらなくても何かに気づく時がくる。そんな戒めとしたくてこんな日記を書きました。

人の手は2本しかないから、抱えられることには限りがあるんですよね。そんなんだから、全部綺麗に救われてくれって思うくらいは自由ですよね。だから今日も誰かのハッピーに繋がるような何かしらの夢を書いていこうと思います。

自分語り、終わり。



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