これで五度目の絶頂だったと思うがはっきりとは覚えていない。あんまり中で出しすぎると翌朝に耳にタコが出来るほどしつこく文句を蹴りつけられるから抑えようと思うのだけど、頭と身体が上手いこと合致しないのがセックスだ。あれこれ細かいことは考えていられない。そういう雑念をふっ飛ばしている時はある意味で集中しているんだろう。何回果てたかも定かではないなんて、本能のレベルの話だ。
 きゅうっときつく吸い上げるように絞まっていた中が緩んで、熱い体液を下腹部で感じた。身体を浮かせて下を見れば、少し透明度の増した乳白色が先端から溢れていた。時折ヒクリと動くそれが腹に擦れる。途切れ途切れになりながら出ていく欲望に、目の前の唇が深く息を吐いた。長い前髪が俯いているから余計に表情が読めないが、火照っている頬と同じくらい赤い唇に色気を感じた。そこを舐めたいと思って顔を寄せて、でもやっぱり躊躇った。自分がイッた回数も知らないのだ。組敷かれているサンジがどれほど精を飛ばしたのかなんて、ゾロに分かるはずもなかった。
 とりあえず上体を起こして結合を解いた。赤くほだされたそこから白いものが伝ってくるのをバッチリ見つけてしまい、用意していたティッシュを数枚、色白の腹に置いた。自分で出したものだから自分で始末してもよかったが、前に一度、乱暴に掻き出していた時に故意無く勃たせてしまったので、それ以来事後は身体に触るなと言いつけられている。
 ティッシュを手に取ったサンジはのっそりと起き上がった。それに背を向けるようにして立ち上がって、ズボンのチャックをずり上げた。脱ぎ散らかしたシャツを肩に引っ掛けて、この扉の向こうの風呂に入ろうと思ったら、なァと掠れた声で呼び止められた。ちらりと盗み見ると、拭ったティッシュにたっぷりと付いた白濁を見ていた。


「…おれの中って、そんなに気持ちいいのか」


 しみじみと呟かれて、答えに困る質問だと思った。
執拗に求めてしまうのだから、訊かなくたって分かるだろうに。そりゃ最初はあまりの狭さと硬さに食い千切られるような思いもしたが、よくなきゃそんなに出さない。別に挿れることが全てでもないけど、回をこなす度に柔らかくなるそこは腰が浮わつくほどよかったりする。が、こちらばかりが身体を重ねることに夢中になっているとは思われたくないので、素直にいいとは言い難い。逆を言うのも気が引けた。白濁の量が物を言っているし、次に行為に及ぶ時、機嫌を損ねて強情を張られるのは面倒くさい。
 何も答えずに黙っていると乱れた髪の隙間から覗く瞳と目が合った。ティッシュを掲げて見せるので自然と眉間に皺が寄った。


「簡単な質問だろ。いいのか悪いのか、どんなんだって。…耳がお留守か?」

「…とりあえず服着ろ」

「腰が痛くて動けません。よっておまえにひん剥かれた服を取りに行けません」


 サンジは室内の入口を指差した。それを目で追わなくたって、ゾロにはわかっていた。
 格納庫に入ったそばから仕掛けたのだ。煩わしいボタンとベルトを先に攻略した。指差した先にはサンジが身に付けていた服の一式が揃っている。
 いつまでも白い肢体を見ているのも目に毒なので、仕方がないから服を拾ってやった。それを当然だという目で見守られたので、上から目線のその顔めがけて、一式すべてを投げつけた。


「で、どうなの」

「何が」

「だから、おれの中だよ」


 スラックスは上手くキャッチ出来たようだが、シャツは顔面で受け止めていた。しわくちゃになったストライプに溜め息を吐きつつ、サンジはまた同じ質問をしてくる。


「変な感じだ。おれでさえ知らねェ場所を、てめェは知ってる」

「…知りたかったら指突っ込んでみりゃいいだろうが」

「生憎とてめェとヤる時以外に使ったことねーもんで」


 まあそうだろうと納得しかけて、これは結構うっかりでた本音ではないかと思った。自分が初めて開拓した場所を、自分だけが独り占め出来ている。それはただでさえ言い知れぬ優越感を抱くのに、それを容認しているのだと宣言されたような物言いは、思ったより気分が良かった。その行いに免じて、興味津々に尋ねられた質問に答えてもいいかという気になった。


「まあ、おまえン中はおまえより素直だな。欲しいっつって、離さねーから」


 再び風呂へ入ろうとした背中に、ピシャリとネクタイが投げつけられた。なんだかんだと今宵も機嫌は良いらしい。







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