目が覚めた時、珍しくルッチが側でタバコを吸っていた。
タバコを吸うのが珍しいというより、起きた時に私の近くにいることが。
多分、私が気絶するまでやったからだろう。
微妙だけども一応、良心のようなものはあったらしい。
……服を着せるとか、ベッドに運ぶとか、そういうことはしてくれないみたいだけど。

「…起きたか」
「ん」

ソファーに寝転んだ状態の私に、タバコを片手に携えたまま、タバコ臭いキスをする。
いいの、暗殺者がそんなわかりやすい匂い残して。
この男のことだから、そこらは抜かりなくやっていると思うけど。

手始めに床に落ちた下着だけを着て、それから服を拾うために身体を起こすと、少し離れた場所で何かがキラリと光っていた。

「……あ」

近付いて拾い上げる。
手にあったのは、昨日からしていた引っ掛けるタイプのピアスだ。片方だけ、落ちている。
あの時、ルッチに引っ張られた感覚はこれか。

そうして耳朶に手をやると、かちり、と爪先に何かが当たった。


「え、」


何で。
人差し指と親指で耳朶を何度も触って、そこには確実に、ピアスが刺さっている。
しかも、キャッチが必要なタイプの。
慌てて反対側も触るとそっちもキャッチタイプになっていて、どういうことかわからずに視線を彷徨わせる。

何よ、もう。

すぐに答えが出てルッチを見れば、タバコとは反対の手に、私が今までしていたはずの右のピアスを持って、興味なさそうに床に落として。

「……ばか、あんた、いつだってそうよ」
「気に入らねェか」
「誰もそんなこと言ってない」

いつだっていつだって。
言葉にしない癖に、こんなプレゼントだって滅多にしない癖に、こう言うこと平気でするんだから。

「ヘレン」
「…泣いてない」
「そうか」

そうよ。
誕生日でもなくなったこんな日に、泣くなんておかしいもの。
泣いてやるもんですか。


いつだってそう


(…お前の)
(ん?)
(髪を掻き上げる時の)
(うん)
(耳は結構気に入っている)
(……あっそ、変なの)

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