「いつだってそう!」

私の張り上げた声に、彼は常日頃から機嫌の悪そうな顔を更に酷くして、心底鬱陶しそうな表情を浮かべた。

あんたはいつだってそうよ。
私の誕生日に、一緒に居てくれたことなんて、一度もなかった。
今日だってもう日付も変わって。

任務で忙しいのはわかる。
私ひとりに構ってる場合じゃないってことも。

だけど一度でいいから、後からでもいいから、言葉が欲しかった。
それだけなの。
簡単でしょう。
でもね、それだけで私は嬉しいのよ。

まくし立てようとして、その声を飲み込んだ。

「…………」
「…………」
「……もういい、怒鳴ってごめんなさい」

今どうこう言ったって、彼の性格が変わるわけじゃない。
それを承知で付き合っているんだから、怒る方がどうかしてた。

落ち着くために息を吐いて、頬に掛かった髪を耳にかける。

「……ヘレン」

名前を呼ばれ、その体勢のまま彼を見ると、つかつかと私の方に歩いてきていた。

すっと手をこちらに伸ばし、思わずぎゅっと目を瞑ってしまう。
……殴られでもするのかしら。
流石にこのひとも加減はしてくれるだろう、と思っていても衝撃は来ず、ただ左耳を引っ張られた感覚があった。

「何、…」
「……気にするな」
「気にするなって、んッ」

カタン、と小さな音とわかりにくい衝撃が靴のあたりにあって、何かが落ちたことがわかる。
重なった唇、差し込まれた舌。
耳にあった手は後頭部に移動し、引き寄せられて抵抗出来ない。

「んっ、ぅ…、誤魔化されない、から」
「そうか」
「そうよ…ッ」

腰に回した腕でひょいと容易く私を抱き上げ口付けながら脚を進め、いつも彼が座るソファーに同じように彼が腰掛け、その膝の上に私は座らされる。

「…今日、生理だからシない」
「血の匂いはしねェ」
「……あんたのそのデリカシーの無さどうにかならないの」
「必要ねェだろう」
「バカ!」

バレバレな嘘でも、したくないってことは普通伝わるものじゃないの?
…まあ、結局は私の意地というか、拗ねみたいなものだから、したくないわけじゃないけど。

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