本日、2月14日。

天候は晴れ。

九番隊第十三席雪代椿は十一番隊隊舎の前に来ていた。

だが、足はそれ以上前には進まず、左右にうろつくばかりであった。



(なんでこう、十一番隊って入りにくいのよ・・・!)



霊術院時代に不良に絡まれた嫌な経験がある椿は、どうしても十一番隊を敬遠してしまう。

しかし目的の人がそのときの恩人であるとは、人生皮肉なものである。

あまりぐずぐずもしてられない、と椿は覚悟を決めた。



「今日はまだ行くとこが有るんだから。ここでもたもたしてられない!

 た、たのもー!」

「『たのもー』ってお前、道場破りじゃねぇんだから。普通に入りゃいいだろ。」

「こっこれは斑目三席!お早う御座います。」



椿のずれた掛け声に反応し現れたのは斑目三席で、椿は慌てて頭を下げる。



「お前は確か九番隊の・・・」

「第十三席、雪代椿と申します。あの、下野五席はいらっしゃいますか?」

「やっぱりアイツか。奥にいるぜ。ついて来いよ。」



ありがとう御座います、とお礼を述べ、斑目三席に続く。

程なく、目的地に着いた。

机に向かっている背中に二人で声を掛ける。



「おーい、下野。客だ。」

「めぐせんぱい!」

「椿・・・?どうしたんだよ、急に。」

「そんなの決まってるじゃないですか!

はいっ!」



何でいるんだ、と不思議がる先輩に駆け寄り、笑顔で手を差し出す。

手の中には綺麗に包装された箱があった。



「・・・何だこれ?」

「今日はバレンタインデーですから!いつもお世話になっている方々に感謝の気持ちを、と作ったんです。

だからめぐせんぱいもどうぞ!」

「そういうことか。・・・なら、貰っとく。」

「めぐせんぱいに喜んでいただけたら作った甲斐があるってもんです!」



椿はそう笑顔で言うと、先輩に近づき他の人に聞こえないよう小さな声で囁く。



「私も本命にあげるの頑張りますから、めぐせんぱいも本命の方から貰えるように頑張ってくださいね!」

「なっ・・・!べ、べ別にそんな奴いねぇ!!」

「あーもーまたそんな風に・・・。もう少し素直にならないと貰える物も貰えませんよー。」

「う、うるせぇぇぇえ! 椿、てめぇ喧嘩売ってんのか!」



いきなり焦りだす先輩が面白くて、ついからかってしまったら、先輩の手が背中のハリセンへと伸びた。

それを見て打たれる前に、とすばやく退散を告げる。



「では!私の用件はこれだけですので。めぐせんぱいの健闘を祈ります!
 お邪魔しましたーっ!」

「あっこら、椿!逃げるんじゃねぇ!!」



椿は脱兎の如く出て行った。


「あの野郎・・・」

「ハッ!アレじゃどっちが年上かわかんねぇな。」

「ハゲは黙れ!」

「てめぇまたハゲって・・・!

 しっかしマメな後輩だな。」

「・・・ああ。変な奴だ、昔っからな・・・。」





本日、2月14日。

天候は晴れ。

今日の乙女は大忙し!


(愛をからかう椿ちゃんにによによ^^どうもありがとうございました!)

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