誰も動かないのなら私が行かなきゃ、だって私は父上の娘なんだもの。
蔵の中で武装をしてから、屋敷の人達に見つからないように父上が眠る部屋へと急ぐ。本当はそのまま屋敷を出れたらよかったのだけれど生憎私は明智や魔王が何処にいるのかわからない。佐助や独眼竜なら織田が何処にいるのか知ってるはず。途中、佐助の部下の忍が屋敷の外から帰ってきたのを見た。きっと佐助に何か報告に行くんだわ、そう思って部屋へと急ぐ。
甲冑を纏って身体が少し重たくなったけど、我慢して歩く。父上の部屋が近付くと、たくさんの伊達と武田の兵が廊下に座っていた。自分の身をそこに紛れ込ませる為に手に持つ槍をそっと置いて同じように座った。兵達の注意は父上の部屋の中に向けられていたから、誰も私には気づかなかった。
耳を欹てると、佐助や独眼竜達の声がした。私が思った通り、佐助達は織田の話をしている。
山城の国や本能寺、聞き慣れない言葉が続く。その中の地名や建物の様な言葉を注意して聞き取る。頭の中でそれを組み合わせてみるけれど、やっぱり知らない場所を思い浮かべるのは難しかった。だけど私は行かなきゃいけないの。周りの兵達に気付かれないように座ったまま後ずさる。

その時、乱暴に障子を開ける音がした。驚いて周りの兵達と同じように音がした方を見ると、開いた障子から独眼竜が出てきた。

「…独眼竜?」

廊下を降り、門の所へと歩く独眼竜の後ろに伊達の兵が続いた。
「筆頭!」

「出陣っすか!待ってました!」

突然、独眼竜が立ち止まる。細りと南蛮語を呟いたあと、独眼竜は息を吸って叫んだ。

「奥州伊達軍は、本日ただ今をもって解散する!」

「!」

独眼竜の突然の宣言に伊達の兵達が固まった。独眼竜はこちらを振り向く事なく門へと歩き出した。

「何処へ行く!独眼竜。」

佐助の声に独眼竜はニヤリと笑みを浮かべて振り向いた。

「本能寺に決まってんだろ?今度こそこの俺が直々に魔王の首取らせて貰う!」

本能寺へ行く?魔王の首を取る?独眼竜はそう佐助に向かって言った後、再び皆に背を向けて歩きだそうとした。

「待って!独眼竜!」

側に置いた槍を持って独眼竜の所まで走る。

「十六夜ちゃん!」

「…じゃじゃ馬」
佐助が私の名前を呼ぶと、私の存在に気が付いた周りがざわついた。私はぎゅっと槍を抱えて、独眼竜を見つめて口を開いた。

「独眼竜お願い、私も本能寺へ連れていって!」


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