こんなままでは眠れない、そう思っていたけど、ぱっと気が付いたら朝だった。どうやら普通に眠ってたみたい。
起き上がってぐっと背伸びをして立ち上がる。
出来るだけ、昨日のことは考えないようにして着替える。女中達の手伝いをするからいつものような華やかな着物じゃない物に。
なくすから、簪ははずさなきゃって思ったけどなんだか不安だったからそのままにしておいた。

お匙や女中達のところへ行くとみんな私の格好を見て驚いていた。手伝うことにした、そう伝えると女中達はみんなそれに反対した。「姫がするようなことではない」、「お館様に叱られる」なんてことを言いながら。

女中達の言葉を無視して、お匙に手伝うことはないかと聞いたら、お匙は仕事を与えてくれた。言われた通りに仕事をしていると、次第に女中達の方が折れてしまい、私にも手伝わせてくれるようになった。

みんなと同じ量の仕事をしたかったけど、それは駄目だと言われた。反発すると、仕事をすべて取り上げられてしまうからおとなしくそれに従った。



稽古してるからこれくらい大丈夫、そう思ってたけれどやっぱりやり慣れてないからすぐに疲れてしまった。情けない、こんなことで疲れるなんて。

だけど、駄目。ここでやめたら。そう自分を叱って次の仕事の指示を貰うために私は女中達のところへ戻っていた。


「…?」

その途中、四人の男の方達が廊下に座って話をしていた。何か考え事をしているみたい。青い衣服を着ているからどうやら伊達の方達みたい。そっと四人に近付いて声を掛けた。

「どうしたんですか?」

私の声に四人の方が跳ねた。そして一斉にこちらを向いた。

「あ、あんた誰だ!」

四人の内の一人が私に向かって言った。

「えっと…私は武田の女中です!」

武田の姫、そう言って変な気を遣われると嫌だから、女中だと嘘をつく。

「なんだ女中か…」

「あの…あなた方は伊達の方々ですか?」

私の言葉に男の方々は頷いた。
「ああ、俺達は伊達の兵だ。俺は良直。こいつらは左馬助に孫兵衛、文七郎だ。」

「私は十六夜っていいます。」

名前を言うと良直さん達は笑ってよろしくなって言ってくれた。

「ところで、皆さんはここでなにをなさってたんですか?」「ああ、実は片倉様に武田の皆さんの役に立ってこいって言われてさ。…でもやることなくて困ってたんだ。」

左馬助さんが苦笑いしながら言う。

「十六夜ちゃん、何か俺らに出来る事ってないのかな?」

「んー…そうですね…」

良直さん達が出来る事…。女中の仕事?いやでも、男の方がする仕事ではなさそうだし…。あ、そういえば。

「西の国境の物見番とか…?」

「物見?」

「詳しくはわからないんですけど、物見は寝ずの番みたいだし…代わってあげたら喜ぶんじゃないですか?」

良直さん達の顔がぱぁっ、と明るくなった。

「おお!それはいい考えだな!じゃあ早速行こうぜ!十六夜ちゃんありがとうな!」

お礼を言う良直さん達ににこりと微笑む。四人は手を振ってその場を後にした。

「…私も頑張らなくちゃ」

自分で自分に気合いを入れ、私は踵を返して歩きだした。


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