どこを見ても青が広がる今日の晴れた空とは、まるで違う。
そこだけ曇り空のような雰囲気を醸し出しているヤツが一人。フェンスに寄りかかっているのを見てため息が出た。
「どうしたよ」
めんどくせぇと思いつつ、声を掛けてしまう原因は分かっている。
ただ、放っておけないだけだ。
「シカマル…」
「なんだぁ?辛気臭ぇな」
「………」
俯いたコイツの目は苦しそうに下がっていて、知らずのうちに拳が握られる。もちろんコイツには見えないように。
コイツのこんな顔、見たいわけじゃねえのに。
「天気いいなー」
別にそんな顔をしている原因を知りたいわけではないから脈絡のないことを言う。
むしろ知りたくもない。
コイツがこんな顔をするのはいつもアイツのためなんだ。
俺の言葉を聞いて、俯いていた頭をそっと起こした。
今にも水滴がこぼれそうになっている瞳が見たくもないのに見えてしまって。
ぐっと掴まれたように、心臓あたりが痛くなった。
小刻みに震えているコイツの唇みたいに握り締めた拳も小さく震えた。
「なるこ」
「………」
「泣けよ」
「…っ」
「泣けっつってんだろ」
めんどくせぇなァ、お前は。
呟いた言葉は自分の言葉なのにあまりにもコイツへの愛しさを感じた。
感じすぎて、めんどくせぇのは俺か、と心の中で嘲笑して。
やっと聞こえた嗚咽と苦しそうなコイツの声にまた、ため息が出た。
泣けと言ったのは自分なのに、改めて泣かれるとどうしようもなく堪えられず。
喉の奥がチリチリと痛み出して、抑えていたものが溢れそうになってしまったから。
気が付けば、知らずのうちに手を伸ばしていた。乱暴に引き寄せて、腕の中へとしまい込んだ。
「シカ、マル…」
一瞬だけ、息を飲むように体が固まったけど、すぐに目の前の俺の服を掴んで泣いた。
信頼されているんだと、実感する一方で。
戸惑いのないコイツに少しだけ虚しさを感じた。
(そんなもん、今さらだろ…)
自分に言い聞かせる間も、自分でも驚くほど優しくコイツの頭を撫でる俺は。
コイツにとってはただの友達で、慰めの意味でしかないということも分かっていて。
「泣いたら笑えよ」
なんて、大切な大切な友達を慰めるように聞き分けのいい人間を演じたりして。
本当は。
体全体に感じるお前の温度を、どうしたらこれからも独り占め出来るのだろうと。
どうしたら、離れなくて済むだろうと。
「うっ…シカマルぅー…」
「あーよしよし」
抱き締めた柔らかい体をぎゅっと腕の中に閉じ込めて、必死になって考えていた。
ほんとうはぜんぶ、うそ
お前に触れれるのなら、友達面して慰めてやる。たとえ、うそばかり吐いてでも。
彼女には気付かないように、彼女の髪に触れた唇は。
本当のキスなんかよりも切なくて愛しいものだった。
end.
▼アンケート解答の『学パロ』『切甘』という設定を参考にさせていただきました!
悲恋気味ですみません´`
解答ありがとうございました!
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