窓辺から感じる生ぬるい風を浴びながら、あーでもないこーでもないと唸る彼女を横目に。
夕飯後に淹れてもらった甘めの珈琲を嗜んで、ソファで寛ぐこの何でもない時間がすごく好きだ。


「…こう?違うな、こう…?」

グルグルと巻かれた巻物を目一杯広げて印を結ぶ練習をする彼女。
邪魔をしないようにと黙っていたけど、気になって仕方ない指の位置。


「なるこ」
「んー?」
「人差し指の場所が違うんじゃないかな」
「えっ、あ!ほんとだ」

やっと出来たー!とやりきったようにボクの隣りにダイブ。どうやら指の動きだけを確認していたと思ったら微量にチャクラも使っていたらしく、ふう、と少しため息を吐いた。

「大丈夫?疲れたかい?」
「うん、ちょっとだけ」
「明日紅さんに聞けば良かったのに」
「その前に、少しでも理解しておきたくて」

ゆっくりと起き上がりながら、ボクの胸にすり寄るように頭を落として甘える彼女をすぐに許してしまうのは。
勉強熱心のその理由が、ボクに近づきたいから…なんて。
彼女は頑張りすぎて、自分の限界を忘れてしまう時がある。
倒れられちゃ困ると思う反面、その頑張ってる理由がボクとなると強く言えなくて。


「なるこ、無理しちゃいけないよ」
「ん、大丈夫」
「本当かなぁ…」

強く言えないかわりに、彼女の頭を撫でる習慣がついた。彼女は気持ち良さそうにすり寄りながらながら、「心配性だなぁヤマトは」なんて言いながらクスクス笑っている。


「心配もするよ、なるこは頑張りすぎるから」
「うん、ありがとう。気をつける」

そう言って彼女は目を瞑った。口ではそう言っているけれど、やっぱり心配で仕方ない。本当は忍なんて危険なことは辞めて家でのんびり過ごして欲しい。だけどボクに追い付きたいと必死になっている彼女を見るととてもそんなことは言えなくて。

「なるこ、何かあったらすぐに言いなよ」

こんな言葉しか与えることが出来なくて歯痒い。そんな葛藤を知りもしない彼女は嬉しそうにありがとうと笑った。

「ヤマトはお父さんみたいだね」
「えっ…おとう、さん…?」

突拍子のない言葉に、唖然となり撫でていた手が止まってしまった。

(お父さんって…)

何故か目が乾いてきて自然と細めながらちょっとだけ肩を下ろす。
止まってしまった手に気付き、不思議に思った彼女はどうしたの?と目を開いた。


「いや、さ…お父さんはないと思うんだけど」

笑ったつもりだったけど多分引きつっていただろう。そんなボクにより一層瞳を大きくさせきょとんとする彼女。

「どうして?あったかいし、守ってくれるし。頼りになるし、尊敬できるんだもん」

ね?お父さんみたいでしょ?
と、問い掛けながらもう一度ボクの胸に寄りかかってきて。
ボクはハハハと引きつり笑いをしながらも。
そう言われたことに関してはとても嬉しいことで、なにより屈託のない彼女の笑顔がすごく愛しく感じてしまって。

(…まぁ、しょうがない)

なんて思ってしまうあたり彼女には相当甘いということは分かっていて。だからだろうか。

「なるこ」
「ん?」
「"お父さん"はこんなことしないよ」

相当甘いということは、相当彼女に溺れていると自分なりに解釈をして。
今だってほら。
どうやって彼女ともっと触れ合おうかと考えて、考え出した結果がこれ。

「…ん」

寄りかかった体を抱き寄せて、安心しきった唇にふわりと触れるだけのキスをした。
別に"お父さん"と言われたことを気にした訳ではなくて、ただ。彼女に触れたいから。
そんな不純な考えをしながら抱き寄せた体を離してみると、再びきょとんとした彼女は、みるみる顔を赤くして不満を訴えるように目を逸らす。

「…そんな軽いのなら、お父さんでもするかもしれないじゃない…」

小さく言いながら、俯く彼女に。
ボクは至極嬉しそうにクスクスと笑いながら。

「それはもっと濃厚なのを希望するってことでいい?」

耳元で囁けば、そこまで言ってない!と茹でダコのように赤くなる彼女が可愛くて、ボクはもう一度その愛しい体を抱き寄せた。


そうして僕はまた君に溺れる


それは本当に家族愛に似ているのかもしれないけれど、それでも限りなく増していく君への愛しさはきっとボクが一番大きさで。
誰一人として、負ける気がしないよ。
今も、これからも。



end.


アンケート解答の『お父さんのようなヤマト』という解答を参考にさせていただきました!
ただの変態になってしまったような気がします…^^;が、愛されることを意識して書かせていただきましたがどうだったしょうか…?(笑)
解答ありがとうございました!




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