言わない
「お前にしては、上出来だな」
大人ぶったふりをして、その金髪に触れる。少し固めのごわついた髪の向こうにコイツの熱を感じて、微かな痺れに目眩がした。
昔から感情を表に出すことは苦手だったからちょうどいいと思っていたけれど、この口布の下で口元が自然と緩むことは止められなかった。
(…口布って便利だな、)
そんなことを思っていたら、綺麗な青が細められて白い歯がいたずらっぽく少しだけ覗いた。
「だろ?オレだって、やれば出来るんだってばよ!」
ニシシ、といつもの眩しい笑顔は。俺が一番といっていいほど好きなそれで。
思わず、ニッコリと微笑んでしまって。
思わず、もっと触れていたいと思ってしまって。
こんなんじゃ、足りないよナルト。
ほんとはもっと、引き寄せて。
もっともっと、お前に触れていたいんだ。
自我を隠し込んでしまうのは得意なはずなのに、なんだか今日は機能しない。
ガキ扱いをされて恥ずかしいのか、次第に赤らんでいく頬に伸ばしかけた手を、ぐっと堪えて。
お前のすぐそばの笑顔に、今日も俺は無理やり距離を作り上げるのだ。
言 わ な い。
この笑顔を失いたくないから。
end.