言えない
「お前にしては、上出来だな」
その声と同時に大きな手がオレの頭に乗せられた。体が揺れるかのように鳴り響く鼓動が、先生に聞こえるんじゃねぇかと焦りながらも必死に隠して。
「だろ?オレだって、やれば出来るんだってばよ!」
思いっきり笑ってやれば、あの大好きな笑顔を向けられて。
…やべぇ、顔が熱いってば。
余計バレちまうと焦ってしまうのに、隠すどころかどんどん熱くなる原因は、いまだ離されない頭の上の先生の手。
嬉しいけど…、必死なんだってば。
嬉しいけど…、止めらんなくなるから。
触れて欲しいけど、触れて欲しくなくて。
笑って欲しいけど、笑って欲しくない。
わがままなのは分かってるってば。
でも先生、知らねぇだろ?
先生の言動ひとつひとつが、オレのすべてを突き動かす。
それをどうにか必死に隠して、オレは今日もあんたの前で笑うんだ。
言 え な い。
苦しいけど、先生が笑ってくれるなら。
end.