泣けるくらいに、


行き着くところはいつも同じだった。
あれやこれや遠回りして寄り道だってして、絶対に間違っていると思っても結局オレはここに立っている。


「シカちゃん寝てた?」
「あー寝てた」
「嘘じゃん!しっかり起きてんじゃねーか」
「お前な、毎回毎回何時だと思ってんだよ」
「オヤジくせーこと言ってんなよ。若者に夜はねえんだぜ?」
「オレは睡眠取れねえならオヤジになってもいい」


ハイハイ。シカマルの反論はいつも通り適当に交わす。
そのあとのため息だってめんどくせえというあの口癖だってもう慣れた。

どかっとベッドに座ってオレが置いていったゲームに手を伸ばし、電源をつけるとシカマルは呆れたように机に座りやりかけの課題に手をつける。
これも、いつものことだ。


「シカちゃん課題?マッジメ〜」
「お前がやらなすぎなんだろ」
「シカちゃんなら課題なんてやんなくたって授業についてけんのに」
「これやんなくて居残りとか言われちゃたまったもんじゃねえ」
「あーッ!!死んじゃったじゃんシカちゃんが話かけるから〜!」
「…お前が話かけたんだろうが」


チッと聞こえた舌打ちに自然と眉を潜めてしまった。慣れてる、なんて思っていたのにふとした瞬間オレを邪険に扱うシカマルに嫌悪感を抱く時があることを思い知らされる。
こんなもの、知りたくもないのに。


知らなくても済むのはお前に会わなきゃいいだけだ。こんな風に会いに来なければきっと、そんなことは知らずに済む。
だけど会いに行かなければ、それはそれで知りたくない感情が次々と溢れてしまうのだ。


「キバ」
「あ?」
「なんかあったのか?」
「は?」
「なんかあったから、ここに来るんじゃねえのか?」
「………」


何を分かって、そう言ってんだろうと思った。きっと何も分かってないだろう。きっと友人を心配するだけの気持ちだろう。何も分かってないくせに、優しくなんかしないで欲しい。

お前が好きだから、お前に会いたいんだよ、なんて言葉。一つも思い付いてないくせに。



「別に…なにもねえよ」
「なら、いいんだけどよ」


何かあったら、言えよ?

机に座った後ろ姿、こっちを向かないまま。放たれた言葉に不覚にも泣いてしまいそうになった。
その残酷だと思う優しさに、何故か嬉しさと好きだという感情が見事に比例する。
間違いだと思いながら行き着く場所にはいつもお前がいて、お前が笑っていて。どんなに邪険に扱ったってオレを友達として一番に心配してくれる。
…それだけで、いいと思っている。
例えばオレと同じ感情を持っていなくても、いいと思っている。
そのかわり、オレのこの気持ちは間違いなんかじゃないと、それだけは思わせて欲しい。
間違いなんかじゃない。お前が好きなんだ。


涙目を隠すようにその温かい背中にうっせ死ね、なんて言ってみても。
なんだよそれ、と呆れるように呟いたその声がまた優しくて。
オレはまた泣き出しそうになってしまうんだ。




泣けるくらいに、


end.





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