好きすぎて俺、バカみたいだ


やっぱりここにいた、と見つけた時にはコイツは夢の中で。
まだ夏らしい乾いた風が吹く屋上は、確かに昼寝をするにはもってこいの場所だ。

コンクリートの壁にペタリと寄りかかり珍しく無防備に閉じた瞼を晒しているコイツの隣りに、静かに座ってみた。
日陰だからなのか、地面や背中のコンクリートが少しだけひんやりして気持ちいい。


それにしても。


(サスケの寝顔、珍しいってばよ…!)


いつもは机に突っ伏して寝ていたりするもんだから、サスケの寝顔を見るのはすごく新鮮なことで。

鼻筋がスッとしているだとか、睫が長いだとか、思った以上に白い肌なんだとか、発見することがいっぱいで。
もっと見たいという衝動に駆られて白い肌に揺れる黒髪を静かに掬ってみれば、これまた真っ白い肌の額が見えた。


(なんか…かわいい…)


前髪を上げてみるといつもよりいくらか幼く見えてその上呼吸をするためにうっすら開けた口が可愛らしいともう一つ発見。

「……ぷっ」

あまりにも惚けた顔をしているように見えたから思わず吹き出してしまった。

やばい!起こしちまう!
そう思いながら慌てて口を抑えたオレはいまだスヤスヤ眠るサスケを見て少しだけ安心した。
話し相手がいなくてつまらないこの空間だけど、普段のサスケからは見れない発見があってもう少しだけ見ていたい、起こしたくない。
そう思ったオレはこつんと頭をコンクリートの壁につけサスケを起こさないようにと静かに空を見上げる。

なんだか起こさないように、と考えるほど息をするのも煩いような気がして慎重に息を吸ったり吐いたりする。
ふわりと吹いた風を自然と吸い込んで息苦しさが半減された時のこと。

こつり。

突然温かい熱がオレの肩にじわりと広がった。
どうやらサスケが寝ぼけながらも寄りかかったようで。
オレの肩を枕にして、それはそれは気持ち良さそうに眠るサスケ。いつもはオレを馬鹿にしてばかりいるコイツが縋るように寄りかかってきたことが、至極嬉しい。
寝ているから無意識なのは分かっているし、都合よく解釈していることだって承知の上だけど。

あまりにも気持ち良さそうに眠っているもんだから、やっぱりコイツにはオレが必要なんだってば!なんて思わせる。

サラサラと揺れる黒髪に触れ、だらんと置かれた手を握る。そのうちにもっと触れたくて、珍しく無防備に開かれた唇に自分のを押し付けてみた。

(今日はなんだかいい日だ!)

サスケの唇の感触を楽しみながら、意気揚々とそんなことを思う。
唇を離した今でも自然に綻ぶ口元は止められない。
最高に気分がいい、そう思っていた。
…この時までは。





「人の寝込み襲うとはいい度胸してるな」


突然聞こえた声にビックリして体が跳ねた。
オレの肩に寄りかかりながらフンと鼻を鳴らしたサスケはしっかりと起きていて。


「な、ななな…!まさか寝たフリしてたんだってば?!」
「誰が寝てると言った。ただ目を閉じていただけだ」


(こ、コイツ…!)

フンともう一度鼻を鳴らしたコイツはオレの顔を見るなり自信気に笑った。コイツが寝てるとばかり思って色々と手を出してしまったオレはみるみるうちに顔に熱が集まってくる。


(またからかわれた…)


チクショー!と叫ぶオレの横で普段クールのサスケが吹き出しながら嬉しそうに笑っているから、悔しいと思いつつその笑顔にドキンドキンと鼓動がうるさいオレ自身につくづく呆れかえってしまった。



好きすぎて俺、バカみたいだ


end.





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