寂しがり屋のキミに

あたりはすっかり夜が更け、里の灯りもポツポツと消えたこの時間はもう丑三つ時だった。


「ん〜…先生…?」

家に入るとテーブルの上にある小さなランプの前で、ソファーに横になったナルトが目を擦りながらもそっと起き上がった。


「先生今まで任務?」
「ああ。今日は夕方からだったし…ってナルト起きてたの?ベッドに寝てれば良かったのに」
「あー、なんかもうすぐ帰ってくるかもって思ったらなかなかベッドに行くタイミングが掴めなかったんだってばよ」
「はは、なんだそれ」


ふわぁ〜と大きな欠伸をしたナルトの隣りに座ってふぅーっと深呼吸。
そんな時右腕の服をぎゅっと掴まれた気がして隣りを見れば、ナルトはそのままこてんと俺の肩に寄り添うように頭を落とした。


「先生疲れてんの?」
「んー?なんで?」
「今深呼吸したってばよ」
「あーまぁ疲れてないって言えば嘘になるけど」


正直お前に逢えば、疲れなんて吹っ飛ぶんだけどネ。
なんて、三十のオッサンの台詞じゃないか、とか心の中で嘲笑ってみる。
だけどそれはあながち間違いじゃなくて、ナルトが俺の家に来てからというもの、どんな任務のあとでだって疲れはあまり溜まらない。


「ナルト、ベッドで寝てていいぞ」


右側に感じるナルトの熱が少しだけ熱くなっているのを感じて、眠くなったんだろうと思った。

赤ん坊みたいで可愛いな…。


「ナルト、ここで寝るな」
「…ん、寝てないってばよ」


寄りかかったまま一向に動かないナルトは、いまだ俺の右腕の服をぎゅっと握っている。
どうしたのかと顔を覗いてみれば、なんだか幸せそうに瞳を閉じていた。

「…ナルト?」
「先生、」
「ん?」



「…おかえり。」


閉じられていた瞼がふわりと上がり綺麗な琥珀色が見えたのはすぐあとのこと。
俺の服の裾をぎゅっと握って、隣りにいるんだと俺を感じて。
ナルトは多分、幼少時代の孤独がまだどこかに残っているんだと気付いたのは最近で。

だから俺は、どんなことがあろうとお前のところに帰ってくるよ。

そう心に決めたんだ。
しがみつくナルトの手をそっと握って、金色の髪から覗く額に口付けて。


「…ただいま」


この瞬間だけじゃなく、ずっとお前はひとりじゃない。
そう思ってくれるのはまだまだ先かもしれないけれど、いつかそんな日が必ず来るように。

必死にしがみつくこの手を、俺は絶対に離さないよ。



寂しがり屋のキミに

end.





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