お返し
「誕生日おめでとうってばよ!」
パーン!とクラッカーが鳴り響いて、カカシはびくりと肩を揺らした。
「ちょっとクラッカー鳴らすタイミングおかしいでしょ」
「え?なんでだってば?」
「クラッカーって普通、ただいまーって帰ってきた時とかに暗闇の中からおめでとう!わー!みたいな感じじゃないの」
「あーそうだっけ?まぁ細かいことは気にするなってばよ!ははは!」
食事も終わり、コーヒーを片手にベットに腰掛けてまったりの最中に何故かナルトがいきなりクラッカーを鳴らすものだからカカシはギョッとして隣のナルトに問い掛けた。けれど、そのナルトはタイミング云々は気にしていないようで、ニコニコとカカシに笑いかける。
(突拍子のないことをするのは今に始まったことじゃないか)
カカシはそう思うようにして、ニコニコと笑うナルトを見やりぺこりと頭をさげた。
「どうもありがとね」
「どういたしましてってば!やっぱりカカシ先生の誕生日祝って正解だったってばよ!」
「どうして?」
「だってカカシ先生誕生日だっつーのに一人だったんだろ?」
さらりとひどいことを言うナルトに誰のせいだと思いながら冷ややかな目線を送る。だけど当の本人はそんな目線にも気付かずに満足そうにうんうん、と頷いていた。
(ま、伝わるわけないか)
ナルト自身、悪気があるわけではないし、カカシが誕生日の日に一人でいる理由、つまり誕生日を祝うような恋人がいつまで経ってもいない理由に気付くわけもない。
その理由は簡単で何を隠そうカカシはナルトが好きだった。
だからこそ、ナルトが誕生日を祝ってくれたのは何よりも嬉しいことだけれど、さっきの言葉は聞き捨てならなかった。
いつもなら仕方のないことだと諦めるのだが、誕生日というイベントだからなのか受け流せずにさらに仕返しもしてやろうという気になってしまった。
ニコニコと笑うナルトをじっと見つめる。するとその視線に気付いたナルトが、どうかしたってば?と首を傾げた。
「祝ってくれたからお返しあげようか、ナルト」
そう言うと、ナルトの目が急に輝き、
「そ、そんな〜!お返しなんて悪いってばよ〜!あっ、でもカカシ先生がどうしてもって言うんなら貰ってもいいってばよ?」
「うん、どうしてもあげたい」
「じゃあ仕方ないってばね〜貰う!」
案の定、何をくれんの?!と身を乗り出したナルトの肩に手を置いて、少しずつ近づいて行く。
一瞬きょとんとした顔が見えたけれど、気にせずに近づいて行って口布を下ろした。
「なっ………!……………なっっっ!!!」
外気に晒した唇をナルトの唇に押し付けて触れたのは一瞬だった。
すぐに離れると目を真ん丸く瞠ったナルトの顔がそこにある。
口をぱくぱくとしながら発する言葉はうまく出ないようで。
その反応が可愛くてもう一度手を伸ばした矢先のこと、真っ赤な顔をしたナルトが自分の手で口元を押さえた。
「な、何してんだってばよ!!!」
「え、だから、お返し」
「な、なななななんで!!!」
「嫌だった?」
「………っ」
そう聞けば、途端にナルトは言葉を詰まらせる。その隙にもう一度たたみ掛けるように問うた。
「もっとお返しあげようか?」
「は?!」
「まだいっぱいあるよ」
伸ばした指先がナルトの頬に触れた。ぴくりと反応を見せるナルトの顔がさらに赤みを帯びていく。
「い、いいいいいらないってばよっ」
小さく俯いたナルトの顎を持ち上げて口元を覆っている手を静かに退かす。視線を合わせれば震える碧い瞳が不安げに見上げていた。
「欲しいでしょ、ナルト」
カカシがもう一度頬を慈しむように優しく撫でると、耳まで赤くしたナルトはモゴモゴと言葉を紡ぐ。
「い、いつから気付いてたんだってば……」
「ん?」
「お、おれがカカシ先生のこと…その…す、好きなこと」
おずおずと言うナルトは腑に落ちないというように真っ赤になりながらも唇を尖らせるものだから。
カカシはふと微笑んで、ナルトの腰をぐっと引き寄せて。
「さあ。いつからだろうね」
その尖らせた愛おしい唇にもう一度お返しという名の口付けを落とすのだった。
(知っていたよ。そう、ずっと前から。それよりももっとずっと前から、俺はお前を好きだけどね)
end.
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色んなものを端折った気がしてなんだろうこれ。とりあえず一生爆発しててください的なふたりを書きたかったので、うん、まぁいいや(笑)
このあと濃厚ちゅーをしたあとに来年も祝ってねナルト☆っていうリクエストを先生からいただいたのに当のナルトは恥ずかしすぎてぜってーヤダ!とかツンデレ発揮すればいいんじゃないですかね!^▽^
ナルトが先生すきすきーデレデレ〜になるまで道のりが長ければ萌えます。
そんなカカシの誕生日\(^o^)/やっぱりナルトとふたりでおめでとーー!!!
2013/09/15.