優しさと裏切り
*超スーパーほんのり微裏



少しだけ微睡みの世界を行ったり来たりしていた。それがすごく心地よくてずっとここにいれればいいのになあと思いながらも。

重い瞼を上げる、そこにはあんたがいる。

「眠いか?」
「べつに」
「一瞬寝ただろ」

バレてたのかと言うように口だけで笑って見せると、いい度胸だな、とアスマも小さく笑った。
体を支える柔らかいベッドに横たわり、髪の毛に差し込んだ武骨な指が何度もゆっくりと頭を撫でる。武骨なのにその触れ方は顔に似合わず異常に優しい。

そうしていればそりゃあ眠くなるか、とまた瞼を下ろそうとしたらそうはさせないと言うように今度は荒々しくオレの首もとに噛みついてくる。
何度も何度も吸い付いてくる唇。そのたびにちくりと髭が当たって少しだけ痛い。

「髭、いてえよ」
「今に知ったことじゃねえだろ」

擦れるたびにちくりちくり。
痛いのは、…首もとだけじゃない。








「聞いたか?シカマル」
「なにを」
「結婚、すんだって」
「はあ?」
「あの二人」

なんの脈絡もなく突然そう言ったキバの視線の先を何気なく辿ったそこにいたのは、見知った二人。
どうして今まで気付かなかったのだろう、キバによる情報から忽ち二人にしかない何かを感じた。

あんなに近くに触れていたのに、そんなことまるで気付かなかった。

脳内にはどす黒い暗雲。焼けるように胸の辺りが痛い。
だけどすぐに平常心に戻る。キバには気付かれないようにゆるゆると息を吐いた。

「へえ、知らなかった」
「オレも。紅先生何も言わねえから」
「…だな」
「結婚祝いとかやんなきゃなあ」
「あー…なんかめんどくせえな」

キバにはまたそれか、と小突かれて笑っていたけど内心では冷め切っていた。

御祝い?ばかばかしい。罰当たりだ。
あの声を、あの腕の中の空間を、あの熱を。知ってるオレが、祝ってあげられることなんか出来るわけがない。








ギシリと軋んだ音で連れ戻された意識。覆い被さるあんたは何も言わずに唇を落とす。知らずのうちに握られた手。あんたは誰の手を握ってるんだろう。そんなことを聞くのも煩わしくて言葉を飲み込んだ。
アスマは何も言わない。だからオレも何も聞かない。聞いたところで答えは分かりきっている。
これが罪深いことぐらい、分かりきっているんだ。
たけど、


「…シカマル」


時々呼ばれる熱に犯された声が、一瞬だけ何もかも忘れさせてくれる。
…なんて。

(調子いいよな)

思いながら、握られた手を静かに離してオレは真上に向かって手を伸ばす。正確にはその声の主の方へ。
伸ばされた手を見て、あんたは目を丸くした。


「珍しいこともあるもんだ」
「そーかよ」
「甘えたいのか?」
「自惚れんな」
「どうでもいいが、……煽るなよ」


煽ったつもりはねえんだけど、なんだか嬉しそうに笑ったからそれならそれでもいいかと思った。

伸ばされた手はアスマの首に絡まって、引き寄せる。
もっとそばに、もっと近くに。
あんたが誰の手を握っていようと、今は。

離したくねえんだ。


二人きりしかいない塞ぎこまれた一室で、欲望の深海に溺れていく。
理性なんて、この熱に触れたときからもうとっくの昔に崩れている。
甘い言葉も、触れる温度も、仕方ねえから全て受け取ってやる。
いつか、それを全部手放す時が来るまで。

あんたの、優しい優しい裏切りのせいで。

それがどんなに罪深くても、滑稽でも。その時が来るまでオレはずっと裏切られてやる。


end.



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罪深いと思いながらも離れられないイケナイ関係のふたりという生誕祝いなのにかわいそうな構図。
キバは何もかも知っていてゆえのあの発言だったら萌えるとあとから思いました(^q^)(キバ→シカも好きです)
悲恋にしてごめんね!紅先生一番ごめん!シカマルおたおめー!


20120923/sep15,22に提出.












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