「やっと言いやがったかアイツ」
「意外と早かったわね」

サクラにことの経緯(キバのこと)を話してみるとこんな返事が返ってきた。そして何故かシカマルもいた。

「二人とも知ってたの?!てかシカマルなんで居るの?!」
「居ちゃわりーかよ。てかアイツのことは気づかねえ方がおかしいだろ」
「そうよね、あんなに分かり易いのに」
「そ、そうなんだ…」

そう言われると全く気が付かなかったあたしはどうなの…と少し落ち込んだ。この中ではクラスも近くて会う確率も多かったのに。

「で?どうするの?」
「えっ」
「えっ、じゃなくてキバのことよ!」
「ど、どうするのって…」


…あたしは先生に振られたばっかりだし…。

そう言いたかったけどここで先生の話を出していいものか、チラリとシカマルの方を見たらシカマルはお構いなく、というように目を逸らす。

「言っとくけど、シカマル知ってるわよ」
「えええっ?!なんで?!サクラ喋ったの?!」
「ちげえよ、それも見てたら分かる」

この人…エスパーなの?と思いながらあんぐりと口を開けたままのあたしにサクラもさらりと「そういうことよ」と促した。

「あんたさ、カカシ先生に振られたんでしょ?」
「う、うん」
「じゃあさ、キバと付き合ってみたら?」
「えっ!」
「付き合ってみたら好きになるかもしれないじゃない」
「…そういうもんかな」
「そういうものなんじゃない?ねえ、シカマル」

サクラに同意を求められたシカマルは少し考えて「さぁな」とだけ答えた。煮え切らない返事に、あたしの決意も固まらない。
…多分シカマルがキバと付き合えと勧めても、あたしの決意は固まらないのだけど。


「ナル子、キバのこと嫌いなの?」
「まさか!嫌いなんて思ったことはないよ」
「じゃあいいじゃない!これを機に新しい恋よ!」

バン!と叩かれた肩は思いのほか痛かったけど苦笑いをしてごまかした。
そのうちサクラは委員会があるからと早々に教室を出て行った。
教室にはシカマルと二人。あたしはというとまだサクラの勧めを受け止められずにいる。

「シカマル部活は?」
「今日はこれ」
「ああ、戸締まり当番!」
「そ。めんどくせえったらねえな」

日直と同じくらい月一のペースで回ってくる戸締まり当番らしくその記録ノートにめんどくさそうに記入しながらシカマルはぼそりと口を開いた。
「アイツはさ」
「?」
「ちょっとやそっとじゃお前のこと諦めねえよ」
「そう…なんだ」
「だからよ、お前も納得行くまで好きでいていいんじゃねえか?」
「え…誰を…」
「誰って、そりゃあお前が一番好きな奴を、だろ」

"一番好きな奴"

真っ先に浮かんだのはやっぱりあの人で。


「お前が納得行くまで好きでいて、それでもダメだって時に考えりゃいいんじゃねえの?キバのことはさ」
「…それでいいのかな」
「言ったろ?キバはちょっとやそっとじゃお前のこと諦めねえって」


もしも、シカマルの言ったことが正しいのなら。
あたしはキバに甘えることになるかもしれない。

だけどそれでも先生を諦めるためにキバの気持ちを利用するなんてことは出来ない。

それになによりも、あたしはやっぱり先生が好きだと会う度に思い知らされる。


「シカマルありがと!キバ待たせてるから行ってくる!」
「おー早く行け。鍵閉めちまうぞ」


サクラには悪いけど、シカマルと話して気持ちは固まった。

…というよりも、最初から決まっていたのかもしれない。
あの時、先生と初めて話したあの日から、あたしはきっと好きだった。
例えば振られても、諦めようって決めたとしても、体が勝手に反応するの。

どきりと鼓動が打つことだって、涙が出そうになることだって。
全部全部。
先生が好きだから、体が勝手に反応するんだ。

(キバにもちゃんと、伝えなきゃ)

こんなあたしを好きになってくれたんだから…。


思いながら、走り出した廊下。
キバがいる教室はあともう少し。
…そんな時だった。



「好きじゃないよ」



キバがいる教室から、聞こえたのはあの人の声。低く優しく響く、愛しい声のはずなのに。




「好きじゃないって言ってるでしょ…………うずまきのことなんて」




突き刺さるように痛いのはなぜ…?



end.


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