「シカマル…それ、なに…」

こいつに会う前に、チョウジにでもあげてしまうんだったと思った時にはもう遅く。
オレの手元にある紙袋いっぱいのチョコを見て、なまえはげんなりとした。

「これ、な。あれだ、くの一の奴らみんなで配ってたみてえでよ」
「へえ〜、くの一のみんなってシカマルのこと好きなんだぁ」
「いや、キバにもナルトにも配ってたし義理だろ」

本当のことを言っているのに、何故責められている状態になってしまっているのか。それは紙袋の下の方には義理ではないものもいくつか存在していたからで。黙って置いていくもんだから断ることも出来ず、とりあえず袋に入れてしまった。
普段抜けているなまえだから、当然そんな袋の中身なんてもんは気にしないだろうと思ったのが甘かった。女の鋭さというものは怖い。そしてめんどくせえ。

「まぁ!義理にしては丁寧で綺麗に包装してありますこと!」

中身を見たわけじゃないのに、そんなことを口走るなまえ。術でも使ったんじゃねえだろうな、とすら思うけど感心してる場合ではなく、ふんっ、といじけてしまったなまえがズカズカと部屋から出て行ってしまう。

「なまえ!」

とっさに掴んだ腕。しかしなまえは振り向かずに顔は俯いたまま。

「どこ行くんだよ」
「だってここにいたら怒っちゃうし」
「今に始まったことじゃねえだろ」
「だから嫌なの!こんなことで怒るなんてシカマル呆れるでしょ!」

ようやく上げた顔の先に、潤んだ瞳もよく見えるようになった。

「…呆れねーよ」

ハァとため息をつけば、潤んだ瞳はさらに睫を濡らしてしまうほど涙を浮かばせた。
全くホントにめんどくせえ。
こんなことで怒るお前が、不安で微かに震えるお前の目元が。
いちいち可愛く見えてしまう自分についにヤキが回ったんだと思い知らされてしまって。

「怒っても構わねえからここにいろよ」

引き寄せて抱き締めて。目尻に唇が当たれば、しょっぱい味が口内に広がった。

オレの腕の中で唇が当たったなまえの目尻はみるみる赤くなる。
これで一件落着か、と思いきや。

「じゃあ怒るからね!」
と目を意地悪そうに釣り上げて、

「好きでもないのに受け取るなんてシカマルのターラーシー!!」

抱き寄せて今にも唇同士が触れ合うというのに、なまえの不満は留まらず。
「全部義理とか嘘つくなー!!」

「鼻の下伸ばしてんじゃないわよー!!」

続いていく不満の嵐。
……いい加減、勘弁してくれ、と少し途方に暮れながら。
まだしょっぱさの残る舌と唇で不満不平の飛び交う口を塞いでやることにした。



舌の上であまく融けた


end.




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