追いつきたくて一緒に並んで歩きたくて。
だけどこんなあたしじゃ、一生無理だから。

繋いでいてね。
離さないでね。

どこまでも一緒に連れて行ってね。




Happy Birthday9.15
k
akashi hatake





「早く大人になりたいなぁ」

ごろりと芝生に寝転びながら空を見上げた彼女が、なにやら物思いにふけるように言った。

大人って…。
彼女にしてみたらいくつくらいからが大人というんだろう。
確かに歳は大人とは言えないけれど、お前が大人じゃないというならそのお前と付き合っている俺はどうしたらいいの。重々分かっているんだから今更ロリコンなんじゃないの?みたいな疑問がわくようなことを言わないでよ。

なーんて思ったけれどなんだかそれは自爆しそうだから胸の内に秘めておいて。とりあえずそう思った理由を聞こうじゃないの。


「どうしたの急に」
「えー。なんとなく!先生はあたしのこと子供だと思わない?」
「………」


それはどう考えても"先生"と呼んでる以上はどうしてもねえ。二人きりの時は名前で呼んでよ、って言ったのに一向に呼んでくれないよねお前。
まぁそれはさておき。
お前がこーんなに小さい時から見てる俺から言わせてもらえば、十分大人になったと思うんだけど。大体あーんなに小さい時には想像すらしてないでしょうよ、俺と付き合うなんて。
ま、俺だってしていなかったけど現にこうやって二人でいるんだし?
この俺を惚れさすくらいになったということは、やっぱり内面は大人になったと思うんだけどなあ。


「まぁ、大人とは思わないけど子供でもないんじゃないの?」
「え〜それって中途半端!」
「そう?お前が大人すぎてもおかしいと思うけど」
「なんで?!先生は大人な女性嫌いなの?!子供が好きなの?!ロリコン?!」
「…………お前ね、」
「うっ、じょ、冗談だよ冗談!そんな怖い目しないで」


焦ったように俺の忍服の袖を掴む彼女。
そういうところが、ガキだよね。
言えば怒るだろうから言わないけれど。
でも実はそんな彼女が可愛いと思うあたり、自分は本当にロリコンなんじゃないかと思うふちはあるのだけれど。
いーや違う違う。
ロリコンだからじゃなく、彼女だから可愛いと思うんだよ。と自分への無意味な反論をしていたら、袖を掴んだ彼女の瞳がふいっとそらされた。


「紅、先生みたいな大人な女性ってどう思う?」
「紅?なんで?」
「だって…………この間見たの。先生と並んで歩いてるとこ」
「…?」
「すごくね、すごく、似合ってたの。絵になるっていうか…」


もごもご。
語尾が小さくなっていく彼女の瞳はやっぱり不安げで。おまけにぎゅっと掴んだ手がさらに不安げな彼女の気持ちを煽っているかのよう。

大丈夫だよ。
お前以外考えられないんだから。

きっと口でそう言ったって、頑固なお前は安心出来ないんだろうなぁ。


「いいなぁ、紅先生。綺麗で強くて。あたしは到底あんな風にはなれない」
「別にならなくたっていいじゃない」
「ならなきゃダメなの!」
「どうして?」
「だって…!」


…だって、今のあたしじゃ。
どうしても先生に釣り合わないもん。


ぎゅっと袖を掴んだまま、小さな唇をきつく噛んでいる。伏せられたきれいな瞳は見えずに睫毛が艶やかに揺れた。



でも。

「大人はそれくらいじゃ泣かないでしょ」

彼女が悔しそうにしているというのに、俺はというと自然と頬が緩んでしまう。


「お前には悪いけど、その悔しさはなんだか嬉しいネ」

だって俺を想って悔しがって、泣いて。
ぜんぶ俺のためだと思うと素直に嬉しい。

頬は緩んだまま、彼女を見やれば「なんで?」って膨れっ面。
ははっと笑えば、もう!と小さく押し返されて掴んだ袖を離そうとしたから、瞬時にその彼女の手を掴む。


「…離してよー」
「だーめ」
「離してってばぁ!」
「離していいの?」


…いいの?

もう一度聞けば、潤んだ瞳で心配そうに見つめられる。


大丈夫、離さないから。

そう言うように伸ばした指先で、彼女の前髪を撫でて。辿るように白い頬の上を滑らせる。
触れた部分はたちまち桃色に染まって。

きれいな瞳は何かを伝え受けるように静かに閉じられた。



ねえ、伝わってるでしょ。
俺はお前しかダメなんだ。



これこそ子供地味た言い分。
誰にも触れさせない。俺だけのお前。
誰に何を言われても、隣りにいるのはお前じゃなきゃダメなんだよ。
それだけは譲れないんだ。


とんだ独占力。
本当はちゃんと口にすればいいんだけど、今までもこれからも言うつもりはなくて。

照れくさい、ってのもあるけどね。なにより、お前にとって常に頼れる存在でいたいんだ。
いつまでもお前より大人でいさせてよ。


…お前を護るために。


「ごめーんネ」

何もいわずに呟いてみたけれどきっと彼女には届いただろう。

だってほら。

触れた指先に彼女の温かい指先が重なって、絡ませたから。


"伝わったよ"

そう言うように瞳をひらいた彼女が、へへ、と柔らかく口元を緩めて優しく笑ったから。


俺はといえば、耐えることなんて出来ずに思わずその笑顔ごとぜんぶぜんぶ、抱き寄せた。




指 先

(触って、伝えて、愛して、)

そんな顔するなんて、もっともっと独り占めしたくなるじゃないの。




end.

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企画サイトsep15,22に提出。
むっつり先生おめでとー\(^^)/






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