*学パロちっく






「さみい、」
「そう?」


どうしてこんな寒空に、海なんかに来てるんだろう。潮風が尋常じゃなく冷たい。雪までちらついている。しかも徒歩ときたもんだ。


「帰ろうぜ」
「いや!」
「お前なぁ」
「シカマルはいっつも部屋ん中で丸まってるけど外の空気も少しは吸いなさい」
「十分吸った。ほら、帰るぞ」
「だーめー!」


全くシカマルは寒がりだなぁ、とか。よく言うぜ、お前こそ鼻水垂れてるくせに。
なんでここに来たのか、理由は分からない。まぁ大方コイツの気まぐれだろうけど、それをわざわざ許すオレも大概コイツを甘やかしているに違いないが。

「何かあったのか?」
「何もないよ」
「気まぐれか?」
「そう、あったりー」

やっぱりな、思いながら諦めたようにため息を吐いた。こうなったらコイツの気が済むまでいるしかねえか。そう決め込んだとき。

「シカマル見て!」
「あ?」

コイツが指差した先に、夜空をこれでもかってくらい光る星。さっきまで雲に隠れてたのに、それは少しずつ姿を表した。
初めて見るくらいの無数の星の数。知らずのうちに後頭部が背骨につくくらい首を曲げていた。

雲もいいけど星もいいなあ。

「ね!ね!ね!綺麗でしょ!」

のんびりと眺めていたのに、隣りから騒がしく言われてムードねえなとか思いながらも、ああ、と返事をした。

「あー!シカマル!こっちも見てよ!」

言われるや否やゴキリと音が出そうなくらい首を無理やり正面へと曲げられて。

いってえな、言う前に正面に見えた光景に絶句した。

「すごいでしょー!」

得意気に言うコイツの声が遠くに聞こえるほど、目の前に広がるのは夜空に浮かぶ無数の星がゆらゆらと揺れる海の水面に写っていて。
無数がさらに無限大に。
さっきより多くなった星の数にオレはというとやっぱりボーっと眺めることしか出来なかった。


「す…げえな」


やっと出た言葉はありきたり。まぁそれが一番手っ取り早い表現だし、あれこれ付け足すのもめんどくせえ。

「でしょ!やっぱりね!シカマルこういうの好きでしょっ」

嬉しそうに言うコイツは星なんか見ずにオレを見ていた。そしてまだ鼻水も垂れたまま。

馬鹿じゃねえの、呟いたらなんでよ!って反抗してくるコイツはやっぱりそのわりに嬉しそうだ。

「お前これなんで知ってんだ?」
「雑誌で見たの!ちっちゃく載ってたの、田舎の絶景スポットって」
「田舎かよ」

吹き出したら、隣りのコイツも甲高い笑い声。

「でも良かったでしょ!」

ふふんとまたしても自慢気。なんか悔しいからここらで指摘してやる。

「自慢すんのはいいけど鼻水拭け」
「うっそ、垂れてた?!」
「おう、思いっきり」

早く言ってよー!
焦って鼻水をティッシュで拭くコイツにまた吹き出して前を見れば広がる無限大な小さな光。
寒くて凍え死ぬかと思ったけどたまには。
こういうのも悪くねえ。
そう思えるのもコイツとだから。
なんて、調子に乗るからぜってー言ってやらねえけど。


「サンキューな」
「は?」
「は?じゃねえよ。ここ教えてくれて」
「ああ、それか!じゃあご褒美ちょうだい」
「はあ?なんだよ」
「じゃあちゅーがいいな」

ちゅー、と唇を尖らせて近付いてくるその間抜け面をいつもは押しのけてやるんだが。まぁ今日は、この星に免じて。

「…」
「なっ!」
「これでいいだろ」
「ほんとにした!」
「お前がしろって言ったんだろ」

きゃーとかわーとか騒がしく言いながら、肩にもたれ掛かるコイツに、心底呆れながらも。
もういっかいって、胸ポケットにしがみついてせがんでくるコイツに呆れていたはずのオレはまんざらでもなく、何回もその間抜け面に唇を寄せた。

本能が掠めてくちづけた


散々間抜け面してたくせに、唇を離した瞬間は一瞬だけ女の顔になる。
そんな顔で"シカマルにこれ、見せたかったんだ"って言いながらまた唇を寄せるからコイツってほんとめんどくせえ。
(歯止めが効かなくなるんだよ)



end.





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