起きてるけど
どうした?




明日も学校。今は日付が変わるちょっと前。
どうせ返ってこないだろうと思いつつ、起きてますかー?という意味のないメールを送ってみた。
そうしたら思いのほか早く鳴った携帯のメール着信音。その先に、メールボックスの中じゃ数少ない先生の宛先が表示された。

起きてたんですか?!

寝てた方が良かったのかよ


これまたテンポよく返ってくる。もしかして、メールとかマメなタイプなのだろうかなんて思いながら、自分の携帯に先生のアドレスがあることに違和感を覚えて。

元々このアドレスは補習を受けた生徒にはほとんど教えていて、その時だけメールを送っていいと言われた。てっきり補習の生徒用の携帯かと思いきや先生自身の携帯だったわけで。

で?どうした?
何かあったのか?


そんなメールが来たから、

ごめんなさい、
何でもないです。


そう送ってしまった。可愛げのないのはいつものことだ。それが例え、片思い中の相手でも。

ならいいが。
何かあったんじゃ
ねえかと思った


どうせ返ってこないだろうと思ってきたのに、数分後規則的に返ってきたメールの内容はちょっとだけあたしの口元を緩ませた。

心配してくれた
んですか?

ああ、まあな

どうして?

どうしてってだな…

生徒だから?


この文を送る時は、勢いをつけた。まぁどう返信されるかは予想が出来た。

そうだな

やっぱりね、なんて思ったくせに胸の奥がちくりと痛い。

ですよね!

今度こそ返ってこないだろうと思い、携帯を静かに閉じた。ため息を一つ吐き、ふと時計を見れば丑三つ時。こんなに先生とメールをしたのは初めてかもしれないし、一歩前進したと思わなきゃ。そう思いベッドに横になろうとした瞬間。

チカチカと光る、携帯のランプの色は紛れもなくさっきまでよく光っていた色で。
急いで開いてみれば、たったの四文字。

寝るのか?

なんだか拍子抜けしてしまったあたしは自然と息を吹き出して笑ってしまう。

先生、暇なの?

もうさっきの胸の痛みは消えていて、終わると思っていたメールが続いていることがただ単純に嬉しくて。

暇じゃねえ
寝れねーだけ


要するに暇なんじゃん、とクスクスと笑いながら携帯を眺めることが楽しい。
今、あたしの他に誰とメールをしているのかなんて分からないけど、他愛のない内容にいちいち返信してくれることが嬉しくて胸がいっぱいになったのに。

先生、生徒とメールなんてしてていいの?

どんどん欲張りにさせるのは、先生のせいだ。


お前はいい
エコヒイキってやつだ




暗い部屋の中、光るディスプレイ。
一瞬止まってしまったあたしは、静かにメール画面から電源ボタンを押した。待ち受け状態の画面からゆっくりと移動したのは先生のメールアドレスと電話番号が表示される電話帳画面。
そこにある電話番号の数字にカーソルを合わせて、思うがままに通話ボタンを押した。

恋する携帯電話


活字だけじゃ物足りなくてどうしても声が聞きたくなって。

(欲張りにさせるのは先生のせいだ)

心の中で呟いた時、少しだけ驚いたような愛しい声が聞こえてきた。




end.



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