「先生あのね、今日ね…」

薄暗い中、ぼーっと灯るスタンドランプ。
その柔らかな光に照らされた彼女は、俺のとなりで手振り付きの話をするのが日課。
今日はあれをしたとかこれをしたとか。
おなまえを照らすランプと同じような優しい声音が部屋中に響いて。

この時間がとても、心地いい。



「でね、サクラが…ね…ん、と…」
「大丈夫?おなまえ。眠くなった?」
「あ…、ううん。平気!それでね!」


おなまえが中忍に上がった頃、俺は班から外れて火影補佐として任命された。
いつも一緒だったのに、離れてしまったもんだからこの時間だけはたくさん話そうと提案したのはおなまえだった。
だからなのか、眠そうにとろんとさせた目をこすりながらも、無理して話し出すおなまえ。

疲れてるんだから寝なさいネって言ったって、

「もっと先生と話していたいよ」

なんて、甘えるように言ったりして。

そんな可愛いこと言われちゃうとね…とは思うけど、やっぱりお前の身体が心配なワケ。
口で言ったって聞かないだろうと分かっていたから、片肘を立ててとろんとして眠そうなおなまえを胸元まで引き寄せる。

「…せんせ?」
「それで?サクラがどうしたの?」

腕の中のさらりと細いおなまえの髪を撫でながら、話の続きを聞き出して。
そうすれば嬉しそうに話し出したおなまえだけれど、瞬く間に会話が途切れ途切れになった。

「あの…ね……、」

途切れたおなまえの声音が今度はスースーと穏やかな寝息に変わった。
小さな子供が甘えるように胸元にすり寄ったおなまえを、またもう一度静かに抱き寄せて。


「…おやすみ、おなまえ」


気持ちよさそうに眠るおなまえの額に口付ける。

優しく響く声音は聞こえなくなってしまったけれど。
俺はこの静寂だって、嫌いじゃないよ。
となりにはお前がいる。
お前の温もりを感じていれる。
ただそれだけで、幸せに満たされるのだから。




きみのつむじを眺める沈黙



end.




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