「よし、解散」

カカシ先生の一言で、本日の任務も終了。
何かと手こずって今日は疲れがどっと溜まっているような気がする。
早く帰って休みたい…そう思っていたのに。

「…と、お前は居残りね」

と肩を叩かれて振り向くとにっこり笑ったカカシ先生がいた。

「えー、何でですか?」
「お前今日作戦通り動かなかったから。罰としてこれ手伝ってもらうよ」
「えー!!」

カカシ先生の手元にはごっそり報告書の束。今日の分だけではなく一週間くらい溜めてるんじゃないかってくらいの量で。

「先生ー、報告書くらいちゃんと書いて下さいよ」
「お前たちに教えることがいっぱいで手が回らないのよ」
「でも先生、今日は疲れちゃったー」


ぶーぶー言いながらも、ちゃんとその背中について行く。本当は任務以外にカカシ先生と一緒にいられることは心底嬉しい。さっきの疲れなんてどこへやら。
だけど素直に言えないあたしは、気持ちに反して言葉を濁す。カカシ先生もその言葉は鵜呑みしてうーん、と考え出した。

違うの、本当は一緒にいたいんだよ。

心の中でつぶやいてみたって伝わらないのは分かっている。
あーあ、失敗しちゃったぁ。なんていつものごとく後悔しているとき。


「あらカカシ。今終わり?」


ふわりと花のような香りが漂ったと思えばそこには綺麗な女の人。
確か紅先生と一緒にいるのを見たことがある。紅先生にも負けず劣らずの美人で、ナルト達が騒いでいたこともあったっけ。
そんな人がカカシ先生に話し掛けていて、カカシ先生も普通に受け答えをしている。
同期だから当たり前なのに、その絵になるような二人にあたしはその場から離れたくなる衝動に駆られて。だけどやっぱり離れたくない。
矛盾な気持ちに押しつぶされそう。

「任務終わったんでしょう?」
「ああ」
「久しぶりに飲みに行きましょうよ」

こんなに気にしてるのはこの空間に自分だけなんだろうと思ったらすごく惨めな気持ちになった。女の人がカカシ先生の腕に手を伸ばす。
直感的にこの人はカカシ先生が好きなんじゃないかと思えて、あたしは知らずのうちに口を開いていた。

「か、カカシ先生!報告書書かなきゃいけないんでしょ!」

女の人がカカシ先生に触れる前に、ぐいっとカカシ先生を引き寄せる。勝手に動いた体に自分でもビックリしたけれど、引き寄せられたカカシ先生も目を見開いていた。

(やっちゃった…!)

後悔しても遅く、目の前の女の人からは心なしか冷めた目線。
しまった、と思い慌ててカカシ先生の腕を離そうとしたけれど。

「あら、私が手伝うわ」

と自信気に言った女の人がにこりと笑った。
なんだか自分が、子供っぽくて情けなくなる。カカシ先生に素直になれもしなかったくせに、いっちょまえに誰かに取られたくないなんて思うなんて。

だけど。それでもあたしはカカシ先生を引っ張ったこの手を離せなかった。
行かないで、なんて我が儘なことさえ思ってしまう。
ぎゅっと握り締めた先生の服。シワが出来た先生の忍服を見て、"あたし馬鹿だなぁ"って思って。ゆっくり離してしまおうと思ったとき。


そっと触れたカカシ先生の手。あったかいその手に驚いて見上げれば、顔の半分は隠れているけれど、確かに分かる優しい瞳が見えた。


「悪いけど、コイツに手伝ってもらうって約束だから」


悪いね、と女の人に手を上げて。さ、行くよ。と促されて。

一瞬しか見えなかった優しい瞳と、一瞬しかあたしの手に触れなかったカカシ先生の手。
トクトクと鳴り響く鼓動を引き連れてあたしはやっぱりその背中ついて行く。



まるで甘ったるい拷問



「今日は疲れちゃったんじゃなかったの?」

と聞けば、たちまち顔を赤くして俯いた彼女に口布の中で頬を弛むのを感じて。口布って便利だなぁなんて呑気に思った。
素直になれないのはお互い様。
ま、今日は最初から、帰すつもりなんてないんだけどネ。



end.




▽カカシ/切甘/年下ヒロインの嫉妬
という設定でした!
美人くのいちのオリキャラがでしゃばってすみません(笑)
素敵なリクエストありがとうございました☆




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