ここのところ雨降り続きの天候だったけれど、今日はスッキリと晴れ渡っている。
青空を見上げて、胸いっぱい空気を吸い込んでみた。
(いい天気)
こうもいい天気だと、気持ちが良くて。
バサリと勢いよく洗濯物を広げた。
布団のシーツやタオル、中には隊服や着物もあって、いつも大量の洗濯物にめげそうだけど今日はなんだかやる気がある。
そんなとき、ぼそりと声が聞こえて振り向くと、縁側で寝転ぶ一人の姿。
「いい天気ですねィ」
きらきらとなびく栗色の髪がきれいでとくんと鼓動が小さく鳴った。
「沖田さん…」
そこに横になる沖田さんは今にも寝てしまいそうなあくびをして目を細めていた。
いつもやる気のなさそうな顔をしているけれど瞳はぱっちり開いているから目を細める沖田さんはなんだか珍しいなぁなんて思って。
猫みたいに目をこする沖田さんがかわいいとさえ思った。
「今日は非番ですか?」
隊服を着ていなかったからそう聞けば、サボりでさァ、といつものように呟いて。その飄々とした態度にあたしは吹き出してしまいそう。
「土方さんに叱られますよ」
「んなもん勝手に言わせとけばいいんでさァ」
「近藤さんが泣いちゃいますよ」
「それはちぃっと面倒くせーや」
ふふ、と笑えば横になった沖田さんもふわりと笑った気がしてあたしはたちまち顔が熱くなる。
ここに働いた当初から、何故か沖田さんの笑顔には弱いということを最近になってやっと知った。
顔が赤くなっているかもしれなくて慌てて洗濯物で顔を隠すように干した。
日差しが暑いなぁ…、思いながら隙間からちらりと沖田さんを覗けばじっと瞳があたしを見据えているような気がしてどうしていいのか分からずとりあえず視線を逸らした。
「お、沖田さん。どこかにお出かけにでも行かないんですか?こんなにいい天気ですし」
「出掛けねェ…アンタは俺にどっか行って欲しいんですかィ?」
「えっ?!」
「さっきからそう言われてる気がしまさァ」
知らないうちに起き上がった沖田さんが、着物の胸元に片腕を入れてだるそうにこちらに歩いてきた。
あたしはさっきから慌ててばかり。
「そ、そんなことないですよ!そんなこと、微塵も思ってません」
早口のように言えば、あたしの隣りに来た沖田さんはニッといたづらっぽく笑って。
「じゃあここにいて欲しいんですかィ?」
そう言われたあたしは目を見開いて一気に顔が熱くなるのを感じて。
たちまち、ふっと吹き出した沖田さんが「分かりやすいお人でさァ」と笑っている。
「お、きたさん…からかわないでください」
俯き呟けば、ふいに頬に触れた沖田さんの指先。ピクリと動いた体はそのまま固まってしまう。
風で頬に張り付いた髪の毛をゆっくりと掬う沖田さんの指先は思った以上にきれいで。
その感触があまりにも心地いい。
「このまま触ってもいいですかィ?」
髪の毛は耳にかけられて、だけど触れている指先は頬の場所のまま。
返事はできなくても、伝わったように腕を引かれて。
「オラァァ総悟ォォオ!!!!サボってんじゃねェェ!!!どこ行きやがった!」
遠くの方で土方さんの怒鳴り声が聞こえる。
引き寄せられた沖田さんの腕の中。目を合わせてクスリと笑った。
「俺はアンタと一緒にいてーんでさァ」
小さく囁かれた耳元、鼓膜が痺れるのを感じながら。あたしもです、と答えたら沖田さんはまたぎゅっと力強く抱き締めるんだ。
肺の中を愛で満たしてシーツの影で。
吸い込んだお日さまみたいな沖田さんの匂いが大好きだと思った。
end.
▽とにかく甘〜い設定を!
ということでしたが甘くなりきれず本当にすみません…!後ほど短編の方でリベンジしたいと思います´`
素敵なリクエストありがとうございました☆
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