どういう経路でこうなってしまったのか。
任務続きで久しぶりに会ったなまえは傷だらけで。擦り傷程度の傷だけど、体だけじゃなく顔にまでついていてなんだか痛々しい。


「おま…なんだそれ」

いきなり現れた傷だらけのなまえ。
それでも何故かなまえはいつも通りの笑顔で、久しぶり!なんて言いながら。
あまりの普段通りのなまえに苛立ちすらこみ上げてきたが、ここは理由を聞いてからとぐっとこらえる。

「久しぶり、じゃねえよ。それどうしたんだよ」
「あ、これ?ただ転んじゃっただけ!それよりシカマル元気だった?いくらいつも悪態つかれてるって言ってもこんなに会わないと寂しかったよ」

ちょっとだけね!、と付け足して何事もなかったようにいつも通りオレのベッドに座るなまえ。
ペラペラと喋るくせにその傷の真相はただ転んだだけ、と濁すのは何故か。
何かあったのか…?
眉間にシワが寄っている自分が安易に想像できる。

何かあったとはいえ、オレには言えねえことなのかよ。

そんな自意識過剰な考えが浮かぶのは、いつからかコイツの気持ちに気付いてしまってから。
目を合わせれば赤く染める頬で俯き、近寄れば焦りだす。
ガキの頃から一緒にいるからなまえの仕草一つ一つで気持ちの変化は手に取るように分かる。
だがそう思っていたのは最初だけでよく考えてみればガキの頃から一緒にいるから、ではなかった。
仕草で気持ちが分かるくらい、オレがなまえを見ていたから、で。
コイツの気持ちを知った今、自分の気持ちも分かったなんて情けねえ。
思いながらも、いつかなまえから伝えてくれるかもしれないという甘えを持ちつつ今に至る。

男らしくねえと言われればその通りだった。


「お前ちょっとこっち来い」
「へ?なに?」
「いいからこっち座れ」

そんな状態だったから余計に落ち着けない。
オレに言えないことがあっても仕方ねえとは思うけど。それでもオレのいない間になまえがこんなボロボロになるのは納得がいかなくて。

「転んだんだったらそれでもいいけどなぁ、もうちょっと手当てくらいしろよ。女だろ一応」
「な!い、一応ってなによ!」

部屋にあった救急セットを取り出して、なまえの額の傷に消毒液を塗り付ける。赤い顔をしながらも悪態をつくなまえは往生際が悪いと思うがそれはお互い様かと思い直して。

「いてえか?」
「いっ、痛いよ!」
「ちょっと我慢してろ」
「………」

消毒液を塗り付けたところに今度は絆創膏を貼って。少しだけ触れるなまえの肌は熱っぽくて柔らかい。

「シカマル…優しいね、なんか気持ち悪い」
「…お前な、それしか言うことねえのかよ」

苦笑いしながら今度は頬の傷。
進めていけば不思議そうに見ていたなまえが静かに話し出す。

「ほんとはね、転んだからじゃないんだぁ」
「だろうな、こんなになんねえだろ」
「修業をね、したの」
「修業?」
「ん…シカマルに、追い付きたくて」

そう言っていつもは目線を外して俯くはずのなまえはオレの目をまっすぐと見据えた。
いつも生意気なことばかり言うなまえから初めて好意を示す言葉を聞いて。密かに待ち焦がれていたはずなのに、実際聞くと柄にもなく鼓動が鳴った。
隠すように頬の傷に目線を移して会話を続ける。

「追い付きたいってどういう意味だよ」

分かってるくせに、決定的な言葉が聞きたかったなんて、欲張りにもほどがある。
焦ったように目を泳がせるなまえが不覚にも可愛く見えてしまった。
ふっと吹き出せば、びっくりしたようになまえの瞳が丸くなる。

「な、に…?」
「お前さぁ、」
「え…?」
「オレにもっと言いたいことあんだろ」
「い、言いたいことってた…たとえば?」

ここまで来て焦らすお前は相当な頑固だな、囁けばピクリと肩を動かして。焦らされてまんまとのせられるのは悔しいけれど、そうも言っていられないほど。

「……」
「シ、シカ…?!」

頬の傷跡にそっと口付けて引き寄せてなまえを抱き締めるオレの体は、誰よりもうんと素直だなんて思ったら馬鹿らしくて笑えた。



今更すぎる告白をしようか



「シカ…」
「なんだよ」
「なんで…抱き締めてるの?」
「お前が言うまで言わねえ」
なんて言ってたのはその時だけで。抱き締めた腕を緩めると、目尻を赤くしたなまえの熱っぽい瞳と目が合ったから。
"なんで"の理由は、このあと何秒後、いとも簡単に教えてしまうことになる。




end.



▽甘/幼なじみ/ヒロインの気持ちを知っていたがしびれを切らす→両想い
という設定でした!
甘くなりきれずすみません´`
素敵なリクエストありがとうございました☆




.





back


- ナノ -