本日終了のチャイムが鳴ってすでに帰り支度を済ませているあたしは一目散にある場所へ向かう。
途中イルカ先生に廊下は走るなー!と言われながらも、向かうスピードは変わらない。

すぐさま目的地についてガラっと勢いよく扉を開けた。
そこは薬品の匂いや独特の匂いが漂っている化学室。

逢いたいひとに逢える場所。

「いっちばーん!」
「残念、お前はビリだよ」

聞こえた声に、これでもかというほどにんまりと頬が緩む。
一番だってビリだって全然気にしない。
だってそこには、大好きな先生がいるから。

「カカシ先生は授業終わってそのままここにいるんでしょ、ずるい!」
「そんな事言われたって俺の教室なんだから仕方ないじゃないの」

前の授業の後片付けをしながら、そう言うカカシ先生は今日もいつもと変わらない白衣姿。
白衣にマスクに、生徒には怪しい化学の先生だなんて言われているけどあたしは知ってる。
先生は誰よりかっこいいんだ。

「カカシ先生はいつもの本?」
「もちろん」
「あたしも読みたい」
「ダメ。卒業してからって言ったでしょ。こないだのやつもう読んだの?」
「まだぁ」
「じゃあそれ読みなさいよ」

教卓にいたカカシ先生がこの時間はわざわざあたしの真ん前に座る。
化学室なのに何冊もの本を抱えているのはこの時間は部活の時間、だから。
あたしは"読書部"に所属していて先生はその担当教師。マイナーな部活だから三年が引退してあたし一人になってしまった。

「お前よくこの部活に入ったね」
「うん、初めはね、すぐ帰れると思って」
「まぁ大体そういう奴が入部してくるよ」
「でもあたし、本読むの結構好き!」

本当は、カカシ先生と一緒にいられるから。
なんてことは絶対に言えないけど。
あたしの言葉を聞いてなんだか先生が嬉しそうに笑ったからみるみる顔に熱が集中した。

先生の笑った顔、だいすき。

思いながら赤面した顔がバレないように本を読む。だけどそれは長くは続かなくてちらりと目の前の先生を覗き見てしまうのはいつものこと。

同じく本に目線を下げている何も知らない先生が見えて。
なんにも会話がなくたってこの空間に一緒にいることだけでも幸せな気分。
いつかその本を持っている手に触れれるのかなぁ、なんて思ってしまった自分が恥ずかしくてまた活字に目線を戻した。

本の内容は面白いけれど、別のドキドキが勝ってしまう。
おまけに今日はなんだか日差しが強くてぽかぽかひなたぼっこをしているかのよう。

「眠そうだね」
「そ、そんなことないです!」

気を抜いた瞬間に出てしまったあくびを見られてしまい恥ずかしさでいっぱいになった。
だけど目の前の先生はまたあの大好きな顔で笑うから、あたしの心はまた幸せで満たされる。

ぽかぽかの日差しと、大好きな先生と。

ふわふわと襲いくる幸せな睡魔に飲み込まれる最中に、かすかに感じた温かさを確認することも出来ず、あたしの瞼はとうとうその睡魔に負けてしまうのだ。




まどろむ場所はここがいい



「人の気も知らないでね…」
ぽつり呟いて目の前で無防備に眠る彼女を見詰めて。
余裕ぶってられるのもいつまで続くのやら…。
そんなことを本当はいつも思っている。
その証拠にほら、眠る彼女に触れたくて仕方ない俺の手が、我慢も出来ずに突っ伏しながら寝ている彼女の髪へと伸びてしまうんだ。




end.


▽カカシ/学パロ/教師と生徒
という設定でした!
素敵なリクエストありがとうございました☆



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