同期たちに手を振って、その場をあとにした。
ひんやりと冷たい空気が少しだけ火照った頬を撫でれば、お酒が回った脳内を少しだけスッキリとさせてくれる。

「みんな、若いよねー。これからもう一軒行くんだって」
「そうみたいネ。あいつらホント体力ある」

呆れたように笑うカカシの隣りであたしも吹き出すように笑えば、白い息が宙を舞った。
街灯のない暗い道なのに、今日は月明かりがとても明るくて。
おまけに隣りにカカシがいるから、真っ暗な夜道もちっとも怖くない。

いつもよりお酒を飲んだからか気分もすごく良くて、自然と笑みさえ零れてしまう。

「あたし、飲み会久々だったな。いつも任務で都合合わなかったもんね。また誘ってね、カカシ」

そう言って満面の笑みでカカシに近付いて顔を覗けば、何故かカカシは複雑そうな顔をしていて。

「カカシ…?」

もしかして、カカシは楽しくなかったのかな…なんて不安になった時。

「わっ、どうしたの?」

いきなりぐいっと引き寄せられて瞬く間にカカシの腕の中。
真っ暗な夜道だと言えど、普段人前ではこういうことをしないからどうしたのかと聞いても。

「…なんでもないよ」としか答えなくて。眉尻を下げるカカシが心配になって抱き締められている胸元から見上げると、眉尻を下げたままハハ、と笑うカカシが見えた。

「カカシ…どうしたの?」
「んー?うん、あのね…」

カカシもいつもより飲んだんだろう。
静かに話すカカシの息から口布をしているのにお酒の匂いがする。
だけどちっとも嫌じゃなかったのは、やっぱりカカシ、だから。

「飲み会楽しかったよ。だけど、お前のそんな顔、誰にも見せたくない」
「そんな、かお?」
「そ。お前は分かってないと思うけど、お酒が入るとなんか…うまく言い表せないけど…」

口ごもるカカシにハテナマークを浮かべるあたし。そんなあたしを見て、とにかくそういうこと!なんて言い切って。
首を傾げると、思い出したように、それに…と話を続けた。

「調子に乗った酔っ払い共がお前の髪触ってたりしてただろ」
「酔っ払い共って…みんな同期だよ?」
「だーめ。俺、アレ見た時ちょっとチャクラ動いたよ」

そう言って、片方の手からピリリと電流が流れる音がした。

「ら、雷切?!」

驚けばまたハハ、と笑うカカシ。

「冗談だよ。でも酔っ払いは危ないから飲み会に行くのは俺がいる時だけにしてちょうだい」

そう言ってもう電流の流れていない指先であたしの火照った頬を撫でた。
ひんやりとはしないカカシの指先。ほんのりあったかくて優しくて。
冷たい空気なんかより気持ちいい。

「それってヤキモチ?」

その指先の感触を確かめながら、自意識過剰とも取れることを言ってみる。
だけどそんな言葉にも呆れたりしないで、カカシの優しくて愛しそうにあたしを見詰める瞳といっしょに、そうだよ、って呟いた。



(愛情とは、) 全てが愛しく全てがもどかしい



酒を飲んだ顔も、いつもの笑顔も、こうやってキスをする時の顔も。
ぜんぶぜんぶ、誰にも見せたくないんだ。
…なんて、子供染みたことを言ったら、お前は呆れてしまうかな。




end.




▽カカシ/恋人/カカシのヤキモチ
という設定でした!
素敵なリクエストありがとうございました☆



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