ねえ先生。
先生は、きっと気付いていないね。
わたしがこんな気持ちで先生を見てるってこと。

もし生まれ変わるなら、
先生と同じ時代に生まれたかった。







生まれ変わったら、何になりたい?
よくそんな質問を耳にするけど、わたしはわたしのままでいい。
ただ、もう少し早く生まれたかったなって思う。

「どうしたの、元気ないじゃない」

そう言いながら、隣りに座る彼こそ。
わたしが早く生まれたかった理由。

「そうですか?普通ですよ」

にっこりと笑った作り笑顔はどうせバレやしないんだ。

「カカシ先生は?ナルトの修行終わりました?」
「いや…終わってないんだけどね。腹減ったとか煩いからラーメン食べさせに行かせたよ」

呆れたように肩をすぼめて、話すカカシ先生はいつも顔の半分くらいは見えない。見えないけれど、どんな表情をしているのかはすぐ分かってしまう。

「お疲れさまですね、ナルトの相手も」
「まぁね、でも嫌いじゃないのよ。案外俺、ガキの相手向いてるのかもね〜」

あ、今度はほっこり笑顔になった。
だけどその表情は子を見る親みたいな顔。
ガキの相手…、その中にわたしも入っているのだと思わずにはいられない。
ナルトと同い年。
わたしを大人なんて思っていないだろうな。


「また、ぼーっとしてる」

隣りから聞こえた低くて優しい声にハッとした。いちいち考え込んで情けない。今に分かったことじゃないのに。

「何かあったんでしょ」

言ってみなさいよ。
そう言ってくれるカカシ先生の心情はきっと、ナルトと同じ子を思う親とおんなじそれで。
ますます話しづらくて息が詰まる。

…詰まるのだけど、それ以上に隣りにいるぬくもりにさっきからドキドキ。胸が苦しくて仕方ない。いつも言ってしまいそうになってセーブする。だけど今日はなんだかいつも以上に、カカシ先生が近くて。


「わたしも…ガキ、ですか?」

小さく呟いた言葉は一番伝えたかったことじゃなかった。それすらも言えない。言える勇気なんてない、わたしはただのガキなんだ。

微かに瞳を見開いたカカシ先生は、なぜかふっと微笑んだ。
分かるはずなのに分からない。初めて見る表情に、わたしは困惑するばかりで。

ガキだよ、

なんて言われたら、立ち直れるかなぁ。
思いながら、カカシ先生の視線から目を逸らしたら。


「ガキでしょ」

頭から落ちてきた言葉にまるでガンッと殴られたように目の前が真っ暗になった。

やっぱり、ね…。
目元が熱くて今にも零れそうになるものを必死に抑えた。

ですよね!って言って流せばいい。意を決して顔を上げようと思ったそのとき。


「でも…、お前が元気ないと心配になるんだよなぁ」

頭の上から降ってきた言葉は、教え子だからとか親心とか、そういうのだと思う。だけど見上げた時に見えたカカシ先生の瞳はやっぱり見たことのないもので。


「…教え子だから?」

聞いて答えられてショックを受けるくせに、つい聞いてしまったのはちょっとだけ期待したから。

だってもしかして、もしかしてこの表情は。


「違うよ、お前だから、だよ」

なんっつー顔してんのよ、そう言いながらわたしの目尻に溜まった涙にカカシ先生の指先が触れて。
もしかして、なんて期待したくせにその通りになるなんて思いもしなかったわたしはただカカシ先生を見つめるばかり。


「そんな顔しちゃダメ、襲っちゃうよ?」

はは、と笑ったカカシ先生に今度はぼっと顔が熱くなったけど。
すぐに近付いてきたカカシ先生のきれいな顔に、わたしはただただ、見惚れるしかなかったんだ。






お前の前では隠してきたんだ。好きなんだよ、ってそんな顔。



end.



▽カカシ/七班設定/切甘/歳の差
という設定でした!
うまく七班設定を醸し出せずすみません><
もう少し子供っぽいヒロインが良かったかなぁ…と反省orz
素敵なリクエストありがとうございました☆







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