彼女はとても寂しがり屋で、一緒にいる時はいつもくっついている。
たまに絵を描く時なんか、離して欲しくて。
そうしないと落ち着いて絵を描けないから。
「なまえ、離して」
そう言うと彼女は素直に離してくれるのはいつものこと。
はじめこそ何も思わなかった。落ち着いて絵を描きたかった。
だから素直に離す彼女の口元が小さくきゅっと結ばれるのを知った時は、なんだか胸がちくりと痛む。
「なまえ?」
「ん?」
「怒ってる?」
「え!どうして?怒ってるわけないでしょ」
ゆっくり絵描いてね。
ふわりと笑って肩に優しく触れた手が離れていった。
離してって言ったのはボクなのに、何故かその離された場所の温度が一段と冷たい。
離れていった彼女は、日当たりのいい窓辺のテーブルに座る。
怒っている、なんて思わないほどの穏やかな顔。だけどやっぱり寂しそうと思うのはボクの自意識過剰なせいかもしれないけれど。
カタンと筆を置く。
それから当たり前のように彼女のそばへと近付いていく。
「…?」
何も言わず彼女の隣りに座れば、彼女は不思議そうにボクを見つめた。
「サイ?」
呼ばれればすぐに。
そのさらりと細い髪が流れる肩へ自分の頭を預けた。
「どうしたの?サイ。絵は描かないの?」
「うん、描かないよ」
「サイからくっついてくるなんて…嬉しいけど、何かあったの?」
優しい彼女の声音を瞳を閉じて聞きながら、ボクはゆっくり答えていく。
「君が寂しそうだったから」
「え…そう、だった?」
「だからそばにいてあげる」
"いてあげる"なんて、そんな言い方。
まるで彼女がねだってるかのようだけど。
本当はボクが彼女に触れたくて仕方なくて。いつも離してというのはボクなのに、いざ離れるとポッカリと穴があいたように寂しくなる。
本当の寂しがり屋は、ボクなのかもしれない。
「ふふ、いつも離してって言うくせに。今日は優しいね。また何かの本でも読んだ?」
茶化すように言うわりに、預けたボクの髪に優しく頬ずりをしながら。
ボクが顔をあげれば、嬉しそうな彼女の瞳。
「君だから…なまえだから、優しくしたくなったんだよ」
別に見返りが欲しかったわけじゃないのに。
ボクが思ってた以上に、可愛い反応。
頬を真っ赤に染めた君は恥ずかしいよ、と言って俯きながら笑った。
同じ色をした頬が愛しくて桃色に染まる頬と唇。
小さく口付ければ、また照れたようにはにかんで。その一瞬一瞬が嬉しくてボクはもう、離れることなんて出来ないだろう。
end.
▽サイ/甘/台詞のリクエストあり
という設定でした!
考えてくださった台詞をそのまま使わせていただきました(人´∀`)素敵すぎてその台詞だけで萌え禿げました////
素敵なリクエストありがとうございました☆
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