このまま。ずっと、このままで。
いっそ二人で消え去りたいと思った。









木の葉に任務を頼んだのは、この人がいたから。銀色の髪、少ししか見えない肌の色、何もかも見透かしたような瞳。
すべてが私を魅了した。初めて触れたあなたの手のひらはとても冷たくて、だけど冷たいからこそいつまでも感触が残って。
その冷たい手に、もう一度触れたかったんだ。
そう思っていたのは私だけだと思っていたのに。


「信じられません…」
「何がです?」
「あなたとこうしていられることが」


彼も同じように考えていてくれて。
奇跡だと思った。
死んでもいいとさえ思った。
今隣りにいるぬくもりが幸せすぎて、現実を忘れてしまいそうになる。


「夜明け前には帰ります」

静かな部屋にそう響く、彼の声。
私はただ、頷くだけ。

こんなにそばにいるのに、彼のぬくもりに触れているのに。
現実はお互い別里の住人。私には来月、婚約の予定もある。彼は忍として生きている。
それぞれの生活があって、それぞれの世界がある。
それが分かっていて惹かれてしまった。私も、彼も。お互い何も言わないけれど、それぞれの世界を壊すような勇気はなくて望んでもいない。

ただこの瞬間に、一緒にいられたらそれで良かった。子供じみた恋愛だけど、それでもやっぱりそばにいたかった。


「カカシさん」
「はい?」
「変なこと言ってもいいですか?」
「変なこと?」
「はい…」
"好きです"

こんなことを言ったってどうにもならないのに言わずには居られなくて。呆れて笑われると思ったのにすぐさま引き寄せられて、カカシさんの腕の中。
黒いシャツ越しに聞こえる鼓動は私と同じ速さだった。

「ダメですよ」
「え…?」
「あまりそういうこと、軽々と言わないで下さいよ」

…抑えが効かなくなるでしょ。
ふわりと緩めた腕の力、見上げればいつもと違う余裕のない瞳。
そんな瞳に胸が苦しくなって、私の方から手を伸ばした。

交わった唇からあつい熱を感じる。
このまま、溶けてしまいたいなんて。
考える余裕もなく、私たちは夢中でお互いを求め合う。

いつか来る現実を、今は夢に変えて。




途切れる愛に糸などなくて



今となっては伝えるすべはないけれど。はじめから終わりまで、確かに愛していたんだよ。



end.





▽カカシ/切甘
という設定でした!
こちらも悲恋ちっくですみません´`
素敵なリクエストありがとうございました☆









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